(社説)ジャニーズ 加害認め迅速に救済を

社説

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 被害者が数百人ともいわれるほど過去に例のない大規模な性加害問題が、ひとつの節目を迎えた。

 故ジャニー喜多川氏による性暴力の実態について調べていたジャニーズ事務所の外部チームがおととい報告書を公表し、多くの未成年が被害に遭ったのは事実であると認定した。現社長・藤島ジュリー景子氏の辞任もあわせて求める内容だ。

 被害を訴える人たちが次々と具体的に証言し、今なお続く苦悩を吐露していた。被害の全容が明らかになったとはとてもいえないが、第三者によって加害の事実が客観的に認められたことは、被害者にとって歓迎すべき前進といえる。

 外部チームが事務所には損害賠償責任があると認め、金銭的な補償を含めて被害者を救済するための仕組みを具体的に示したことは特に評価できる。時効が成立していても広く救済対象とするよう明記した意味は大きいだろう。

 ジャニーズ事務所は自ら調査を依頼した外部チームの提言を受け入れて加害を認め、迅速に救済に乗り出さねばならない。

 アイドルとして成功したい少年たちの弱みにつけ込み、長期にわたって許しがたい性暴力に及んだジャニー氏の行いは、その業績を簡単にかき消すほどに罪深いものだ。

 しかし、加害がおよそ40年も続いたのは、ジャニー氏個人の資質以外に多くの問題があったからでもある。

 報告書は、ジャニー氏とならぶ実力者だった姉の故メリー喜多川氏が問題を放置して隠蔽(いんぺい)したことや、同族経営によって事務所のガバナンスが崩壊していたことなどが背景にあると指摘している。

 かつて週刊文春との裁判で性暴力の事実が認定され、昨年英BBCから取材を受けてなお、経営陣が調査に乗り出すことはなかった。藤島社長のほか、古参幹部として長く要職にあり代表権を持つ副社長・白波瀬傑氏の責任も極めて重い。

 事務所はようやく近く記者会見を開くという。遅きに失したが、藤島氏と白波瀬氏は会見で説明責任を果たした上で、そろって辞任するべきだ。

 調査報告書は、メディアの問題にも言及した。ジャニーズ事務所が隠蔽体質を強めて被害が拡大し続けたのは、メディアが沈黙し、適切な批判をしなかったからだとの厳しい指摘だ。

 朝日新聞を含むメディアは、報道や取引関係を通じて働きかけることができたのに、それをせず、社会の無関心を招いた。性暴力が深刻な人権侵害との認識を持てなかった過ちを、深く省みなければならない。

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