(社説)殺傷兵器輸出 なし崩し緩和許されぬ

社説

[PR]

 憲法平和主義を掲げる国として、国際紛争を助長する武器輸出国にはならない。それが武器輸出三原則と、それを引き継いだ現行の防衛装備移転三原則の根幹のはずだ。なし崩しに殺傷能力のある武器の提供に道を開くことは許されない。

 安保3文書の改定を受け、武器輸出の緩和を議論してきた自民、公明両党の作業チームが、中間報告となる「論点整理」をまとめた。複数の意見が併記されたものもあるが、戦闘機を念頭に、国際共同開発した武器など、殺傷兵器の輸出を可能にする方向性が明確になった。

 現在の三原則の運用指針では、安保面で協力関係にある国へ輸出できるのは、救難、輸送、警戒、監視、掃海の5類型に限られる。ただし、これらに該当しても、人を殺傷し、物を破壊する「自衛隊法上の武器」は含まれないとしてきた。

 これに対し報告書は、掃海なら機雷処理をする砲、警戒・監視なら立ち入り検査を行う際の停船射撃用の銃器は搭載可能ではないかという「意見の一致」があったとした。類型自体を撤廃すべきだとの意見も記されており、輸出できる武器の範囲が際限なく広がる恐れがある。

 他国と共同開発した武器を、相手国が第三国に輸出しようとする場合、現行ルールでは、日本の事前同意が必要となる。報告書では、当然それは認めることになり、相手国ができるのであれば、日本からも直接、輸出できるようにする方向で議論すべきだとの意見が「大宗を占めた」とされた。

 日本が英国、イタリアと次期戦闘機の共同開発を決めたことを踏まえたものだ。技術や費用の面から、戦闘機を単独でつくるのは困難で、共同開発が世界の流れであるとはいえ、戦闘機は殺傷兵器そのものである。

 いったん先方に渡せば、その使い方を制御するのは難しい。維持・管理のための長期的な関与も求められよう。共同開発の合意を先行させ、後から事情に合わないと原則を変えようという進め方もおかしい。共同開発した武器がいいなら、日本が単独開発したものもいいだろうという口実にされる恐れもある。

 報告書はまた、三原則に「国際法に違反する侵略や武力の行使又は武力による威嚇を受けている国への支援」を明記するよう求めた。ただ、ロシアのウクライナ侵攻のように、国際法違反の侵略と明確に認定できる事例ばかりではない。立場によって見方が異なる場合もある。

 これだけ重大な方針転換が、与党の一部の非公開の議論で方向づけられることは看過できない。国会など開かれた場で、国民的議論に付すべきだ。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません