(社説)不同意性交罪 「身近な犯罪」の根絶を

社説

[PR]

 相手の意思に反した性的行為は、心と体にこの上なく深刻な影響を与える重大な犯罪だ。その認識を共有して、被害をなくしていかねばならない。

 性犯罪の確実な処罰を目指す刑法など一連の改正法が先週、成立した。「強制性交罪」を「不同意性交罪」に、「強制わいせつ罪」を「不同意わいせつ罪」に改め、性的自由を侵害するという本質に焦点を当てた。

 「意思を表すいとまがない」「恐怖・驚愕(きょうがく)」「経済的・社会的地位の影響」など、「ノー」の意思を示すのが難しい状況を具体的に挙げ、それに乗じた行為は犯罪だと明示している。

 従来の規定のもとでは、被害者の強い抵抗があったかどうかが重視され、司法判断にばらつきがあると指摘されてきた。

 刑法の性犯罪の規定は17年、110年ぶりに抜本改正され「強姦(ごうかん)罪」を「強制性交罪」として男性の被害も対象にし、法定刑の下限を上げる、被害者の告訴がなくても起訴できる、といった見直しがされた。

 それに続く今回の改正は、性暴力の被害者が声を上げて世界に広がった「#MeToo」運動、国内の「フラワーデモ」など、性被害の広がりと深刻さを、後れをとったとはいえ受け止めた動きである。

 子どもをねらった犯罪への対策も強めた。性的行為に同意できるとみなす「性交同意年齢」を13歳から16歳に引き上げ、16歳未満への行為を処罰対象にした。16歳未満にわいせつ目的でSNSなどを介して手なずけ、会うように仕向ける「性的グルーミング罪」も創設された。

 SNSの普及で不特定の若者に接触できるようになったことが性犯罪の温床になっているとされる。一方、悪意のない接触、やりとりとの線引きが難しい面もあり、運用状況を見守っていく必要はある。

 性犯罪は知っている人の間で起きることが多い、身近な犯罪とされてきた。親密な関係でなされる性的行為は、相手の意思や感情をないがしろにすれば、許されない暴力になる。何をしたら加害となり、何をされたら被害なのか、学校を中心に教育、啓発に力を入れるべきだ。

 被害をだれにも言えず、支援が届かない状況はなくなっていない。ジャニーズ事務所での性暴力疑惑は、地位や関係性を利用した加害が潜在し、継続しがちなことを示している。

 被害直後から司法手続き、医療、心理などの支援を担っているのが各地のワンストップ支援センターだ。より身近に感じられる存在になってほしい。

 今ある被害にしっかり向き合うことが、将来の性犯罪の根絶へとつながっている。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら