小説の密度、奔放、そして詩 大江健三郎さんを悼む 作家・池澤夏樹

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 おおえ・けんざぶろう

 なんと美しい名前だろう。

 やわらかい母音が三つ連なり、それをKという子音がしっかり受けて、更にごつごつしたZが乱して、「ろう」で丸く収まる。音節の数は軽く七五調を逸脱している。

 こんな名前を持った男が詩人でないはずがない。

 いわゆる詩集はない。しかし彼の小説のタイトル…

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