(社説)北朝鮮ミサイル 自国民を苦しめる愚行

社説

 今年もミサイル発射を繰り返し、地域を不安定化させ、自国民を苦しめるだけの愚行を重ねるつもりなのか。世界に正当性を訴えたいのであれば、真摯(しんし)に対話に応じるべきだ。

 北朝鮮が相次いで弾道ミサイルを日本海に発射した。うち18日午後の発射について北朝鮮メディアは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」の発射訓練だったと伝えた。

 報道は「目標水域を正確に打撃した」としている。実際に落下したのは日本の排他的経済水域の内側とみられる。燃え落ちる物体は国内でも目撃された。被害報告はないものの、民間の船舶や航空機を危険にさらし、人々を不安に陥れる行為で絶対に容認できない。

 弾道ミサイルの発射は元日以来となる。これに先立ち北朝鮮は、軍事行動を約1カ月半、自制してきたとする談話を発表。3月に合同軍事演習を準備している米国と韓国こそ、平和を破壊していると主張した。

 言語道断の責任回避というほかない。「行動自制」の背景には、深刻な食料不足があるとみられる。新型コロナ禍で中断していた中国との貿易が再開されたものの、十分な量が確保できていない模様だ。そんな状況での軍事挑発は自国民をますます苦しめるだけだろう。

 北朝鮮は、核・ミサイル問題で会合を開いた国連安保理に対しても強い不満を表明した。米国の言いなりになっているという論法である。

 だが、安保理で拒否権を持つロシアをウクライナ侵攻問題でも全面的に支持すれば新たな制裁決議は受けないと踏み、日米韓に対抗する足場を作る画策をしてきたのは北朝鮮の方だ。

 そもそも昨年だけで約70発とされる弾道ミサイルの発射行為そのものが明白な安保理決議違反である。主張は到底、説得力を持ち得ないと悟るべきだ。

 今回のICBM発射を受け日米韓外相が急きょ会談した。脅威への対処で3カ国の協力が欠かせないことは論をまたない。

 きのうはミサイルの発射数をめぐり日本の防衛省と海上保安庁で食い違うなど、情報の見極めや伝達にも不安が漂う。昨年11月の3カ国首脳会談で合意した、北朝鮮ミサイル情報の即時共有の具体化が急がれる。

 懸念されるのは日米韓の議論が抑止の強化に偏重し、対話を再開する意欲が伝わっていないことである。

 北朝鮮の行動を変えるためには、一定の影響力を持つ中国の協力が不可欠だ。日米韓とも中国とは困難な課題を抱えているが、対立を抑え、連携して北朝鮮を対話のテーブルに戻す外交力が求められる…

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません