(社説)同性婚法制化 国会の無策は許されぬ

社説

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 同性どうしの結婚を認めない民法などの規定は憲法に違反すると、当事者たちが各地で訴えている裁判の地裁判決が、この2年で三つ続いた。

 いずれも国への賠償請求は退けたが、規定については違憲、違憲状態とする重い指摘があった。当事者の権利が守られていない状況を、これ以上国会が黙認することは許されない。

 計6地・高裁で続いている裁判で原告は、民法・戸籍法が同性婚を認めていないことが、法の下の平等、婚姻の自由などを保障する憲法に反していると訴え、是正していない国会の不作為を問うている。

 これまでの3判決は形の上では原告敗訴だが、内容的にはそうではない。

 21年3月の札幌地裁は民法などの規定が憲法の平等原則に違反すると述べ、昨年11月の東京地裁は、家族に関する法は個人の尊厳に立脚すべきだと要請する憲法に照らし違憲状態にあると指摘した。昨年6月の大阪地裁は合憲としたものの、同性カップルが法的承認を受けられないことの問題を指摘し、将来違憲となる可能性に言及している。いずれの判決も、国会による対応を促す点では共通する。

 深く愛し、家族になりたいと思う相手が同性であることは、それが異性である人と同様に、本人にとって自然で、変更しようもないことだ。結婚制度は社会的な承認だけでなく、税制・社会保障上の優遇も伴う。同性カップルを枠外におくのは、差別的な取り扱いでしかない。

 3地裁のシグナルにもかかわらず、国会では法制化の議論は進んでいない。自民党内に異論が強く、同党議員らが参加した会合では、同性愛を精神障害か依存症とする誤った内容の冊子が配られていた。岸田政権も、「『生産性』がない」などと同性カップルを傷つける寄稿をしたことが知られていた杉田水脈衆院議員を昨年末まで4カ月間、総務政務官に登用していた。救済と逆向きのメッセージを発しているのは明らかだ。

 地域での問題の共有は進んでおり、250以上の自治体が同性パートナーシップを公証する制度をもち、人口の6割をカバーする。とはいえ、法的な拘束力はなく、同性婚の法制化までのつなぎにとどまる。

 同性婚を認める国・地域も30を超える。米国では昨年12月、同性婚の権利を連邦レベルで保障する法律が成立した。根強い反対論もあったが、認める州が増え、同性カップルの存在が浸透し、人々の意識も変わった。

 一人ひとりのありのままの生き方を尊重し、その権利を守る役割を議会が果たしたできごとといえる。

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