(寄稿)思い出して生きること 評論家・川本三郎

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 今年、78歳になった。

 2008年に7歳年下の家内を癌(がん)でなくした。子供がいないから、以来ずっと一人暮らしが続いている。悲しみや寂しさは消えることはないが、もう慣れた。

 妹を亡くした民芸運動家の柳宗悦(やなぎむねよし)はこんなことを言った。

 「悲しみのみが悲しみを慰めてくれる。淋しさの…

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