(社説)同時流行対策 不安や疑問が拭えない

社説

 もし明日、熱が出たら――。新型コロナとインフルエンザの同時流行を想定した「外来受診・療養の流れのイメージ」を政府が発表した。発熱などの症状がある場合、高齢者や子どもらにすみやかな受診を促す一方、中学生から65歳未満は、原則としてコロナの「自己検査」を行い、陽性なら自宅療養に入るという流れを想定している。

 コロナの第6波や第7波では、発熱外来の窓口が混雑し、診察がなかなか受けられなかった。医療資源が限られる以上、重症化リスクのある人を優先する考え方自体には異論はない。しかし、具体策の一つひとつを見ていくと、いずれも急ごしらえの感は否めず、課題は山積している。

 まず、熱が出た本人に当初の判断を委ねた場合、きちんとバックアップできる仕組みが整っているのか、体調の急変時に速やかに対応できるのか、不安は尽きない。発熱を伴う病気はコロナやインフルエンザ以外にもある。働き盛りの世代で受診控えが起き、病気の見落としや診断の遅れにつながらないかが心配だ。

 コロナの検査で陰性と出れば、希望者は、電話やオンラインによる診療を受けられるというが、そこで正確な診察ができるのかも心もとない。そもそもオンラインで対応できる医療機関は一部に限られ、態勢を大幅に拡大することが大前提だ。

 国民には前もって薬局などでの検査キットの購入を呼びかけるというが、とても安価とはいえず、どの程度の協力を得られるかは未知数だ。厚労省の承認を受けていないキットが多数出回っており、注意もいる。身近な場所で確実に検査を受けられる仕組みづくりこそ重要だ。

 コロナ疑いの患者を診察する病院やクリニックは、医療機関全体でみれば4割未満にとどまり、最近はほとんど増えていない。これをどれだけ広げられるか、引き続きの重い課題だ。

 先日開かれた政府分科会では、来たるべき第8波は従来を上回る深刻な流行になるかもしれないとの危機感が示されたという。欧州ではコロナの感染者や入院患者の増加が伝えられる。準備や周知のための時間はさほどないと心得るべきだ。

 オミクロン株に対応したワクチン接種には2種類があり、自治体によって対応も違う。厚労省は「いずれか早く打てるワクチンを」と呼びかけるが、迷う人も多い。5カ月間の接種間隔をどのくらい短縮できるかを今月末までに決めるというが、いかにも遅い。目標とする年内の接種完了が間に合わなくなれば元も子もない。政府や自治体には丁寧な情報発信を求めたい…

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