(寄稿)あの夏の、デラシネ 私にとって、本当の戦争が始まった 五木寛之

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 私は昭和七年の生まれだ。一九三二年、満州国建国の年である。

 その年に五・一五事件がおこり、犬養首相が殺害された。犯行におよんだ青年将校たちへの国民の共感は圧倒的で、裁判所には罪の軽減を求める嘆願書が山をなしたという。そういう時代だった。

 物ごころついたときには、すでに日中戦争がはじまっていた…

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