その存在によって社会が支えられ、くらしが回っている現実を見すえ、正義にかなう姿に速やかに改めるべきだ。

 古川禎久法相が先週、外国人技能実習制度を本格的に見直す考えを示した。

 日本で技術を習得して母国に持ち帰ってもらう「国際協力」を目的に掲げるが、実態は労働力を安いコストで調達する手段として使われてきた。人権侵害の温床になっているとして、朝日新聞の社説は同制度の廃止を繰り返し訴えてきた。

 政府は秋にも有識者会議を設ける。遅きに失したとはいえ、実習生本人や支援者から聞き取りをし、新たな仕組みづくりに向けて議論を深めてほしい。

 技能実習の資格で在留する外国人は昨年末で約28万人。就労目的のどの資格よりも多いが、その立場は極めて不安定だ。

 出入国在留管理庁の調査によると、実習生の大半は母国の送り出し機関などに数十万円の費用を払い、借金を抱えて来日する。不当な仲介料をとるブローカーも後を絶たない。

 就労後は原則として3年間転職できないため、劣悪な環境下でも仕事を続けざるを得ない。実際、厚生労働省が監督指導した実習先の7割で、長時間労働などの法令違反があった。所定の期間を終えるとそのまま帰国するのが前提で、米国務省が先月発表した世界の人身売買に関する年次報告書は、日本の技能実習制度を強制労働問題としてとらえている。

 古川法相の発言を引くまでもなく、「目的と実態が乖離(かいり)」している状態を、これ以上続けるわけにはいかない。

 国連の提唱もあって、労働現場での人権侵害行為は国境を超えた「ビジネスと人権」の問題として認識されるようになり、日本政府も2年前「行動計画」を定めた。だが技能実習に関しては、現行制度を前提とした一部改善策にとどまる。

 さしあたり、19年に導入され転職の自由もある「特定技能」への移行を着実に進めることに注力したい。実習生本人に丁寧に説明するとともに、実習先の協力も求める必要がある。

 秋に始まる議論では、働く人たちに「選ばれる国」であるにはどうしたらいいか、という視点が欠かせない。少子高齢化が進み、さまざまな分野で外国からの働き手への依存が高まる。一部に根強くある「受け入れてやっている」という発想の先に、国の将来はない。

 定住や家族帯同などの権利を広く保障し、社会の一員として正当に遇する。外国人が安心して働ける国にするために、社会の諸制度と人々の意識をあわせて変えていかねばならない。