(社説)細田氏の言動 衆院議長の資質欠く

社説

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 立法府の長でありながら、法律の定めを無視するような言動を重ねる。市民感覚とかけ離れた発言にも批判が集中した。そのうえ、女性記者らに対するセクハラの指摘に対し、説明責任を果たそうとしない。これでは、議長の資質に欠けるというほかなく、国会に対する国民の信頼をも損ないかねない。

 自民党出身の衆院議長細田博之氏のことだ。セクハラ疑惑は週刊文春が2週にわたり、深夜に「今から来ないか」と電話で誘われたり、メールで何度も食事に呼ばれたりした、複数の女性記者の証言などを報じた。

 細田氏は最初の記事に対し、「事実無根」と抗議し、2度目は、国会閉会後に「訴訟も視野に検討したい」という短いコメントを公表した。野党が求める議院運営委員会での説明には応じず、記者団の質問にも「抗議文の通り。立場は変わっていない」と述べるだけだった。

 疑惑をもたれた国会議員は、国民の前で、自ら進んで丁寧に答える責務がある。議長として、範を示すことなく、あと2週間余りで会期末を迎える今国会を、このままやり過ごそうというのなら不誠実だ。

 細田氏の議長としての資質に疑問符がつけられるのは、今回が初めてではない。

 昨年末には、一票の格差を是正するための衆院の10増10減案に対し、「地方を減らして都会を増やすだけが能じゃない」と、独自の3増3減案を提唱。中立的な立場の議長が、法律に従った区割り変更を否定するのはおかしいと批判されても、「地方いじめ」などと、見直しを求める見解を繰り返した。

 同じ自民党出身で、細田氏の3代前の衆院議長だった伊吹文明氏が「議会が決めたことを(議長が)公然と批判したら、国会の権威は丸つぶれだ」と述べたのも、もっともだ。

 今年5月の政治資金パーティーでの発言も波紋を呼んだ。「議長になっても、毎月もらう歳費は100万円しかない」「上場会社の社長は1億円は必ずもらう」。議員の歳費はそう高くないので、定数を増やせば、地方の代表を減らさずにすむと言いたかったのだろう。しかし、国会と私企業を同列に論じるのは筋違いだし、月給100万円を「しか」という感覚は、自分たちの声が政治に届いていないと思う国民との距離をさらに広げるだけだ。

 公正中立な議会運営の要である、議長への信頼が揺らいでいる現状は放置できない。立法府全体として、細田氏に責任ある対応を求めねばならない。とりわけ自民党の責任は重い。今は会派を離脱していると、ひとごとを決め込むのは許されない。

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