(社説)国連改革と日本 国際合意築く調整役に

社説

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 ウクライナ侵攻を機に、国連改革の議論が高まっている。あからさまに国連憲章を踏みにじった侵略に対し、安全保障理事会が何も決議しないからだ。

 常任理事国のうち、1国でも拒否権を使えば採択されない。大国の横暴に歯止めをかける手立てを望むのは当然だろう。

 今回の当事者はロシアだが、過去には米中英仏も拒否権を使ってきた。そもそも先の大戦の戦勝国による構成が、今の多極化世界を反映していない。

 国連総会では、安保理で拒否権を使った国に総会で説明を求める改革案が検討されている。大国に責任を自覚させるための一手として賛同できる。

 ただ、安保理制度そのものの改革には厚い壁がある。大国が特権を手放さないうえ、各加盟国の思惑が複雑に絡むからだ。日本は過去にドイツ、インド、ブラジルと組み、常任・非常任理事国を増やすなどの構想を立てたが、実現していない。

 岸田首相は、国連改革に力を注ぐ考えだという。日本はかねて「国連中心主義」を掲げながら、実際は対米同盟に軸足を置いてきた。日本が今後の国際秩序を見すえて国連の価値を再評価するならば望ましい。

 まずは地に足の着いた議論が必要だ。安保理改革は目標として掲げ続けるべきではあるが、多様な国連機能に目を向けて考えねばならない。

 国連は主権国家が寄り合い、秩序をつくる「器」である。その機能は▽制裁や条約などを定める▽対話の場を設ける▽経済開発や平和監視など現場の活動を担う――と多岐にわたる。

 安保理は対ロ制裁を決議できずにいるが、是非を論じる場は設けられた。安保理が機能しなければ、総会が一定の役割を果たすことも今回示された。

 先の総会では141カ国の賛成でロシアの即時撤退を求める決議が採択された。これが各国の自発的な制裁に正当性を与えている。国連は、国際世論を形成する無二の存在なのだ。

 地球温暖化や感染症対策、SDGs(持続可能な開発目標)など、世界が抱える問題を共有し、解決のための行動や規範を定める役割も大きい。

 そうした国連の特質は、小国でも数が集えば力を持てることだ。日本政府はいまも背を向けているが、大国が顧みない核軍縮でも非核保有国が結集して核兵器禁止条約を生み出した。

 日本は大国でも小国でもなく、非常任理事国を最も多く務めた「ミドルパワー」である。平和的な貢献の蓄積を生かし、国連憲章を尊ぶ国際合意を築く公正な調整役をめざすべきだ。そのための多国間の対話力向上が、改革への一歩となる。

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