(社説)自民京都府連 資金配布 明快に説明を

社説

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 不自然な資金の流れ。脱法行為を認めた内部文書の存在。政治資金収支報告書に記載されているとはいえ、事実上の選挙買収と疑われても仕方あるまい。ただ「合法」と繰り返すのではなく、責任ある立場のものが事実関係を明快に説明し、疑念をもたれるような資金配布は、この際きっぱりやめるべきだ。

 自民党京都府連が国政選挙のたびに、候補者側から集めた資金を、それぞれの選挙区の地方議員側に配っていたことが、月刊誌「文芸春秋」の先月の記事で明らかになった。府連を介さず、直接渡していたら、公職選挙法違反(買収)の疑いがもたれる行為である。

 国会では、京都選挙区選出の参院議員である二之湯智国家公安委員長の例が取り上げられた。参院選の公示を2カ月ほど後に控えた2016年4月、二之湯氏側が府連に960万円を寄付。その直後に、府連は京都府議と京都市議計48人の側に20万円ずつ、計960万円を配っていた。

 二之湯氏は寄付額について、府連と示し合わせたものではないと述べた。それではなぜ、端数まで一致するのか。納得できない。資金提供の意図は、党勢拡大の政治活動に充てるためだと説明した。だが、朝日新聞も入手した府連事務局長の「引継書」には、「選挙対策」の項目に資金交付の方法が書かれ、府連が仲介するこのやり方は、公選法違反に問われないようにする「いわばマネーロンダリング」と書かれていた。

 全く同様の資金の流れは、14年、17年の衆院選、19年の参院選の自民党の各候補についても確認できる。組織的な対応であることは明らかだ。今年夏の参院選でも、同じことを繰り返すつもりなのか。

 府連会長の西田昌司参院議員は報道直後、「全て適法」「引継書の存在は確認されなかった」などの反論を動画投稿サイトで公開した。本来なら、記者会見を開いて、一つひとつの疑問に丁寧に答えることが、会長の責任である。

 19年の参院選広島選挙区では、多くの地方議員を巻き込む大規模な選挙買収事件が起きた。昨年の衆院選をめぐっては、新潟5区の候補者だった泉田裕彦衆院議員が、裏金を要求されたとして、地元県議を刑事告発する事態も起きている。

 京都府連の問題について、国会で問われた岸田首相の答弁は、二之湯氏から説明がなされていると、ひとごとのようだった。民主主義の土台である選挙の公正を揺るがす事態が、党の地方組織で相次いでいることを重く受け止めるなら、率先して疑念の解消に動くべきだ。

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