(社説)女性の政治参加 均等法の理念 具現化を

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 国会、地方議会ともに、日本の女性議員の割合は極めて低い。選挙で男女の候補者の数を、できる限り均等にすることをめざした候補者男女均等法が施行されて4年近くになろうというのに、目立った状況の改善はみられない。

 女性候補の擁立に消極的な政党の責任が重いことは言うまでもない。と同時に、女性が政治参加に二の足を踏むような環境を抜本的に改めることが欠かせない。ようやく政府が乗り出したハラスメント防止の取り組みもそのひとつだ。実効性のある対策につなげてほしい。

 昨年6月の均等法改正で、国や自治体は、議員活動と妊娠・出産・育児などの家庭生活の両立を支援する体制づくりを行うとされた。ハラスメントについても、研修の実施や相談体制の整備が求められた。政府は専門家らによる検討会を設置し、今春に向けて、研修用のビデオ教材づくりを始めた。

 作業に先立ち、内閣府が全国の地方議員から集めたハラスメントの事例は約1300件。内訳はパワハラ68・4%、セクハラ22・9%、マタハラ(妊娠・出産をめぐる嫌がらせ)1・4%など。改めてこの問題の深刻さを浮き彫りにした。

 被害を受けたのは、有権者からが53・5%で、同僚である議員からの46・5%を上回った。「投票するからと交際を強要された」「ポスターにわいせつな内容を書き込まれた」「個人情報をSNS上に無断で公開された」などの声が寄せられた。議員向けの研修だけではなく、有権者の意識改革にも知恵を絞らないといけない。

 自治体職員や議員を対象にしたハラスメント防止条例を制定する自治体もでている。こうした先行事例も参考にしたい。

 均等法施行後、3度目の国政選挙となる参院選が半年後に控える。昨秋の衆院選では、女性候補の割合は17・7%と、前回とほとんど変わらなかった。当選したのは45人で、全体に占める割合は9・7%と10%を割り込んだ。次の参院選での各党の取り組みが厳しく問われる。

 立憲民主党泉健太代表は、比例区も含めて可能な限り「女性候補5割」をめざすといい、共産党の公認候補は現時点で約65%が女性になっている。しかし、自民党の動きは鈍い。

 社説は一案として、各党が足並みをそろえて、比例区の候補者を男女同数にしてはと提案した。名簿に順位がなく、個人名での得票順に当選が決まるので、党内合意を得やすいだろうと考えてのことだ。全会一致の議員立法で決めた法律である。このまま均等法の形骸化を許してはならない。

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    常見陽平
    (千葉商科大学准教授・働き方評論家)
    2022年1月29日12時26分 投稿
    【視点】

    ■政治家を志望しないのは、まっとうな判断ではないか  賛同しつつも、妊活への保険適用化と同じ不安を感じてしまった。これは自助・共助・公助と言ったわりに最後はハシゴをはずされた菅義偉のレガシーの一つである。ただ、大きな前進でありつつも、

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    長野智子
    (キャスター・ジャーナリスト)
    2022年1月30日10時25分 投稿
    【視点】

    「女性議員を増やすことによるメリット」を国会議員がほとんど理解していない、感じていないのが最大の問題。超党派議員による「クオータ制勉強会」を昨年から続けているが、特に男性議員中心に「総論賛成・各論反対」が実態だ。「いいことだよね、女性議員が

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