(社説)子どもの接種 情報伝え丁寧に準備を

社説

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 大人だけでなく、新型コロナウイルスに感染する子どもが急増している。先週には5~11歳を対象とするワクチンが特例承認され、3月にも公費による接種が始まる見通しだ。

 注射するかしないか、家庭で十分に話し合って決めることが大切だ。そのためにも接種のメリットとデメリットについて、国や自治体による丁寧・迅速な情報提供が欠かせない。

 海外の臨床試験では高い発症予防効果が確認された。子どもでも感染すればまれに重い症状が出ることがあり、そのリスクを下げる意義は大きい。基礎疾患がある子には専門家が接種を強く勧めている。優先して受けられるよう配慮してほしい。

 一方で、臨床試験はオミクロン株が流行する以前のもので、いまの状況下で感染を防ぐ効き目がどこまであるか、過度に期待することはできない。

 発熱や倦怠(けんたい)感といった副反応の頻度は、大人より低いとの報告がある。ただし日本小児科医会によれば、子どもが接種する他の病気のワクチンに比べると発現率は高いと想定され、悩む保護者も少なくないだろう。

 留意すべきは、接種率の向上を目的とするような運用にしてはならないということだ。同調圧力が強まり、健康上の理由で接種できない子やしない選択をした子が、いじめられたり、肩身の狭い思いをしたりする事態を招かぬようにしたい。

 専門家でつくる厚生労働省の分科会はおととい、大人と同じく、接種を受けるように努める「努力義務」を課すか議論したが、意見はまとまらなかった。幅広い視点から慎重に検討しなければ、禍根を残しかねない。努力義務とすることによって何が変わるのか、わかりやすく説明することも求められよう。

 子どもへの接種をめぐっては難しい問題が多々ある。

 例えば、この世代には他にも打つべきワクチンがあり、互いに一定の間隔を空けなくてはいけない。また、大人用のワクチンを誤って接種することがないよう、場所や曜日を分けるなどの環境づくりも成否のかぎを握る。当日は保護者の同伴が前提となり、泣く子が出るのも想定されるので、現場には多くの人手が要ることになる。

 大人への接種にも増して、政府、自治体、医療界が連携し、ノウハウを共有していかなければ業務は円滑に進まない。

 子どもを守るためにも、大人の感染を抑止する取り組みが重要だ。中でも3回目の接種がなかなか進まないのはどうしたことか。どこに原因があるかを見定め、現場を抱える市町村を、政府や都道府県が継続して支援していくことが不可欠だ。

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2022年1月28日12時55分 投稿
    【視点】

    5〜11歳を対象とするワクチン接種が承認されました。これはこの年代の子供を持つ親の立場からすればとても難しい問題です。 接種によるメリットとデメリットを考えなければなりませんが、科学的根拠に基づいたこれらが私たち国民にきちんと伝えられ

    …続きを読む