(社説)18歳裁判員 幅広い参加に向けて

社説

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 市民が司法に参加する意義を改めて確認し、社会に深く根を張った制度に発展させたい。

 重大な刑事事件の裁判に加わる裁判員の年齢の下限が、20歳から18歳に引き下げられた。

 5年前から18歳も選挙権をもち、来年4月には民法の成年年齢も18歳になる。裁判官と共に有罪・無罪や刑の重さを判断する裁判員について、18・19歳を除外する理由は見当たらない。米、英、カナダなどでも18歳から陪審員の使命を果たしている。対象の拡大をここは前向きに受け止めるべきだ。

 裁判員制度は、多様な人々の参加を通して司法の基盤を強化し、裁判をより良いものにしようと09年に始まった。三権の一つである司法権の行使に携わることは、その後、主体的・自律的に社会に関わっていく契機にもなる。早い段階から経験する道が開ける意義は大きい。

 心配は、この法改正が当事者である若い世代を含め、ほとんど知られていないことだ。

 選挙権年齢を18歳にした際、刑事司法分野、とりわけ少年法の適用年齢については慎重な検討が必要だとして連動は見送られた。今年5月、改正少年法と一緒に裁判員や検察審査員の年齢を引き下げる法律も成立したが、国会の審議は少年法に集中し、法律家やメディアから特に注目されることもなかった。

 18・19歳の裁判員が実際に選任されるのは、名簿作成作業の関係から23年春以降になる見通しだ。政府、裁判所、教育関係者は内容や日程の周知に努め、新制度への円滑な移行を進めなければならない。

 今回の見直しは裁判の現状をふり返る好機でもある。

 裁判員の候補者が任務を辞退する割合は上昇傾向にあり、20年は66%にのぼった。無作為に選ばれた市民のさまざまな視点や感覚を裁判に反映させようという目的を損ないかねない事態で、改善が大きな課題だ。

 裁判員が法廷で質問したり、評議の場で意見を率直に語ったりできる環境を作れているか。主張や立証方法はわかりやすいものになっているか。裁判官、検察官、弁護人は足元を点検してもらいたい。学業に専念するため、学生・生徒であることは裁判員を辞退する正当な理由になっているが、数日なら参加できる、参加したいと考える人もいるだろう。そんな意欲を生かす運用を常に心がけてほしい。

 中学、高校の教職員らは、生徒が近い将来、裁判員になることを想定して指導にあたる必要がある。成年年齢の引き下げによって18歳から契約の当事者になることなどもふまえ、生活と法を具体的に結びつける教育の一層の充実が求められる。

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