(社説)文通費見直し 使途公開の義務づけも

社説

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 国会議員に毎月100万円が支給される文書通信交通滞在費(文通費)は、使途の基準や範囲があいまいなうえ、公開の義務もない。政治家が事実上自由に使える「第2の給与」となっている現状に切り込まなければ、見直しの実はあがらない。

 文通費をまとめてではなく、在職日数に応じて日割りで支払えるよう、来月召集の臨時国会で歳費法が改正される見通しとなった。10月31日投開票の衆院選で当選した新人や元職に10月分の満額が渡されたことに対し、日本維新の会の新人が、活動実態がないのにおかしいと問題提起したのがきっかけだ。

 国会議員には、月額129万4千円の歳費(給与)と年2回の期末手当に加えて、文通費が支給される。93年の法改正で、それまでの文書通信交通費に「滞在」を加え、月額も75万円から100万円に引き上げられた。歳費の方は、10年に日割りにする法改正を行ったが、文通費は放置したままだった。怠慢のそしりは免れまい。

 ただ、本来問題とすべきは、文通費が「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」という、歳費法が定める目的のために支出されているかどうかだ。しかし、使途が明らかにされないのでは、チェックのしようがない。文通費の趣旨に照らせば、定額支給ではなく、上限を定めたうえでの実費請求とし、領収書とともに使途を公開するのが筋である。

 衆院議長が設けた有識者による調査会が01年、衆院改革の柱のひとつとして議員の諸経費を取り上げ、文通費については、領収書をつけた使途報告書の提出・公開を義務づけるよう答申したが、たなざらしにされた。

 維新は14年分以降、所属議員ごとの報告書をホームページで公開。議員団として一括管理している共産党も、まとめて使途を明らかにしているが、各党の自発的な取り組みにとどまっている。地方議会では、領収書の公開など、政務活動費の透明化が進んでいるのに、国会議員は「特権」にあぐらをかいていると批判されても仕方あるまい。

 維新の公開情報をみると、文通費の一部を議員が自らの政治団体に寄付し、その先の使途があいまいになっている事例もある。文通費の趣旨に沿って、使途を厳格に定めることが不可欠だ。携帯電話やネットの普及で情報発信のあり方も大きく変わった。月100万円という金額の妥当性も含め、この際、根本から見直してはどうか。

 岸田首相は自民党総裁選で、政治資金の「透明化の確保」を公約に掲げた。議会第1党の責任として、自民党から率先して各党に働きかけるべきだ。

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