(社説)アフガン誤爆 犠牲防ぐ歯止め考えよ

社説

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 飢えや貧困に苦しむ人びとを助ける仕事を続けていた民間人と家族らが爆撃され、亡くなった。その理不尽な攻撃をしたのは、米軍だった。

 アフガニスタンの首都カブールで8月におきた誤爆事件である。子ども7人を含む民間人計10人が死亡した。米軍は無人機によるこの空爆が誤りだったことを認め、謝罪した。

 標的にされた男性は、米国に拠点を置く慈善団体の現地職員だった。米軍は男性の車をテロリストのものと考え、8時間にわたり追尾したという。

 立ち寄った団体の事務所を過激派の拠点と勘違いしたうえ、爆発物と判断した車内の荷物は水の容器だった。その作戦のずさんさに言葉を失う。

 謝罪や賠償で済む事態ではない。同様の惨劇を繰り返さないために、行きすぎた軍事力の行使に歯止めをかける方策を米国と国際社会は考えるべきだ。

 「差し迫った脅威を前に標的を見極める時間がなかった」と司令官は弁明した。だが、もし爆弾を積んでいたら、住宅密集地での爆撃は大勢の民間人を巻き添えにしただろう。その想像力は働かなかったのか。

 無人機や監視衛星に頼る情報収集の限界も露呈した。バイデン大統領は米軍撤退後も対テロ作戦は遂行可能と言うが、無人機攻撃への依存は再考せねばなるまい。まずは誤爆の原因究明と責任の明確化が必要だ。

 深刻なのは、今回のような民間人の犠牲が氷山の一角に過ぎないということだ。

 国連の報告書によると、2008~20年にアフガニスタンで米軍や政府軍の空爆で死亡した民間人は約3800人にのぼる。誤爆や巻き添えに遭っても、大半が泣き寝入りを強いられてきたのが実態だ。

 とりわけ無人機攻撃については「戦闘員と民間人をどう区別するのか」「司法手続きを経ない殺害行為ではないか」「他国での攻撃は主権の侵害ではないか」など、数々の問題点が国連機関などで指摘されてきた。

 米国はこの20年間、自衛権の行使を主な根拠にしてきたが、そのために失われた膨大な人命の重さを直視すべきだ。

 国際法上も人道上も問題のある一方的な軍事行動が報復の連鎖を招き、新たなテロの土壌を生んだ。その失敗から学び、軍事一辺倒ではなく地元との地道な協働で荒廃地域を立て直す努力に注力せねばならない。

 軍事目的で無人機を導入する国は年々増えており、日本も偵察用の配備を予定している。無人機を忌まわしい無差別兵器にしないためにも、ルールの確立に向けた国際的な議論を喚起してもらいたい。

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