本物だけの輝きに救われる 法隆寺金堂壁画、限定公開

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 70年余り前に火事で損傷した法隆寺金堂壁画がこの秋、限定公開される。古代アジア芸術の白眉(はくび)は深く傷つきつつも、あつい信仰に支えられてきた実物だけが持つ魅力を今なお放つ。閉塞(へいそく)感漂うコロナ禍のなか、唯一無二の美を人々と共有したいと、準備は進む。

 ■創建の地で守られ続けた形、体感を

 1949年、法隆寺(奈良県斑鳩〈いかるが〉町)の金堂壁画は火災に見舞われた。色彩をほぼ失いながらもかろうじて消滅を免れた壁画群は合成樹脂や鉄枠で補強され、境内に建てられた収蔵庫で大切に保管されている。ただ、安定した環境を維持するため、通常は非公開だ。

 こんな分析結果がある。

 焼けた金堂壁画がいまも境内に保存されていることを知る人は48%。一方で同じ割合の48%が、焼損を知らない、知っていても保存の事実を、あるいは保存場所を知らない――。2月、大阪市内であった法隆寺講演会でのネットライブ配信申込者千人あまりに、主催の朝日新聞社が実施した事前アンケートだ。一般での認知度はさらに少ないだろう。

 まずは、金堂壁画が焼損後も創建以来の地で守られ続けていることを多くの人々に知ってほしい。法隆寺のそんな思いを受けて、専門家でつくる金堂壁画保存活用委員会は限定公開に踏み切った。委員長の有賀祥隆(よしたか)・東京芸術大客員教授は「焼けてもなお残った1300年前の形を体感できる貴重な機会だ」と語る。

 この決断を後押ししたのは、2015年の委員会発足以来、四つのワーキンググループが進めてきた調査研究の蓄積だ。収蔵庫への入室人数や時間を制限したうえで温湿度を調べ、大きな影響がないことを確認。耐震性のデータを得る3D計測も実施した。秋の限定公開はそんな地道な取り組みが実を結んだ結果であり、「将来の一般公開に向けたデータを取ることも含めている」(古谷正覚〈しょうかく〉・法隆寺管長)。

 人々の信仰を受け止めてきたオリジナルには、どれだけ記録・複製技術が進んでも得ることのかなわない本物の重みがある。この輝きに、どれほどの先人たちが救いを求め、癒やされたことだろう。そしていまコロナ禍にあえぐ私たちも、ここに希望の光をみる。(編集委員・中村俊介

 ■対象はCF支援者、250人募る

 金堂壁画の限定公開は、クラウドファンディング(CF)で、法隆寺の文化財保存活動を支援した人を対象に行われる。法隆寺を建立した聖徳太子1400回忌を記念した取り組みだ。朝日新聞社が運営するCFのプラットフォーム「A-port」を使う。

 A-portでは2017~18年、運慶がつくった仏像5体(国重要文化財)を安置する浄楽寺(神奈川県横須賀市)の収蔵庫の免震・補修工事費を募った。19年には、「鳥獣戯画」で知られる京都の世界遺産・高山寺が参加。台風被害復旧工事費を集めた。(岡田匠)

 <クラウドファンディング募集期間>

 2021年8月16日(月)午前10時~10月31日(日)午後11時59分

 ※250人に達した時点で終了

 <支援額>

 1口 1万円

 <支援者対象>

 ガイダンス+法隆寺焼損金堂壁画収蔵庫見学

 2021年11月16日(火)~11月21日(日)

 午前10時~午後4時 30分間隔で各回数人

 1口につき、お一人様入場可

 法隆寺境内の大宝蔵殿入り口集合

 <支援方法>

 クラウドファンディングA-port(https://a-port.asahi.com/projects/horyuji2/別ウインドウで開きます

 ※8月16日午前10時以降アクセス可

 ※現金書留の方はご支援の前に必ずA-portのコールセンター(03・6869・9001、平日午前10時~午後5時)へお電話を。現金書留の場合、収蔵庫見学は日付のみご希望をうかがい、見学時間は法隆寺側にて指定させていただきます

 ※法隆寺に直接お電話されても対応はできません

 ※見学希望者は必ずA-portを通じてご支援下さい

 ▼注意事項

 ・手荷物は最小限でご参加ください

 ・ヒールのある靴はご遠慮下さい

 ・悪天候などで、見学の時間の変更をお願いすることがあります

 ・収蔵庫の見学はマスク着用、手指消毒、検温へのご協力をお願いいたします

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