(社説)コロナと学生 遠い正常化 支援続けて

社説

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 コロナ禍のため半年にわたってオンライン主体の授業を余儀なくされた大学・短大・高専のほぼ全てが、後期から対面授業を再開する見通しとなった。

 といっても一気に正常化されるわけではない。文部科学省によると大半は遠隔授業との併用で、「対面」の方が少ないところが全体の3分の1に及ぶ。

 気になる調査がある。

 全国大学生協連合会が学生約9千人を対象にこの夏アンケートをしたところ、体調についての問いに「やる気が起きない」「ストレスを感じる」との答えがそれぞれ4千前後あった(複数回答)。自由回答欄には「小中高生は普通に通学し、大人はキャンペーンで旅行まで楽しんでいるのに、なぜ学生だけ家にいないといけないのか」といった声が多く寄せられた。

 大学生は行動範囲が広く、飲酒を伴う集まりの機会も多い。一方で集団感染が起きれば厳しい批判が向けられる。慎重姿勢をとる大学とその方向に追いこむ風潮に対し、学生が疑問や不満を抱くのは無理はない。

 授業料や施設整備費などを例年通り徴収されるのも、とりわけ理科系や実技系大学の学生には理不尽と映る。アルバイト機会の減少による経済的な苦境も手伝い、休学や退学を考える人も珍しくないという。

 政府は困窮学生に10万~20万円の緊急給付金を交付し、多くの大学も独自の支援金制度を設けたり、心の相談窓口を整えたりして対処してきた。だがコロナ禍の影響が各方面に及ぶなか、社会の側が学生を取り巻く環境の厳しさに、十分に目を向けてきたとは言い難い。

 対面授業が始まれば解消される問題もあるだろう。しかし学園生活が完全に元に戻るのはまだ先の話だし、経済状況も直ちに回復を見込めそうにない。政府は学生たちの現状を把握し、この先持ちあがる問題も想定して、必要な支援策を講じなければならない。

 心強いのは苦境の打開に自ら乗り出している学生の動きだ。たとえば高知大の立野(たつの)雄二郎さんたちは、収入を得たい学生と働き手の欲しい農家を結ぶ企画に取り組んだ。もとは感染リスクの低い働き口を提案しようという発想だったが、始めてみると農家の人々とのふれあいが学生の心の支えになった。

 ほかにも、先輩がオンラインで新入生の相談に乗るなどの活動は各地でみられる。学生同士は距離が近く、気持ちを吐き出しやすいため、大学が設ける窓口とは違った効能がある。

 コロナという災いを、困難を乗り越える力を磨く機会に転じる。大学や地域社会はその挑戦を後押ししてもらいたい。

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