(社説)国会バリアフリー 当事者の声生かすとき

社説

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 誰もが暮らしやすい社会を実現する。その目標に向けて政治を進めるきっかけにしたい。

 先の参院選で当選した議員がきのう、国会に初登院した。「れいわ新選組」の舩後(ふなご)靖彦(61)、木村英子(54)の両氏、野党統一候補だった国民民主党の横沢高徳氏(47)の3人は、車いすで中央玄関の仮設スロープから院内に入った。

 舩後、木村両氏は、介助者とともに本会議場に入り、正副議長の選挙では、介助者が投票用紙に代筆し、参院事務局の職員が投票した。「バリアフリー国会」の第一歩である。

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後氏は、手足を動かせず、声も出せないため、目や口の動きと文字盤などで意思疎通を図る。木村氏は会話はできるが、生後8カ月のときの転落事故が原因で首から下の自由を失った。

 「障害者が安心して当たり前に地域で生きられる権利と保障を」。木村氏は選挙戦で、当事者の立場から、そう訴えた。

 全ての国民が分け隔てられることなく、互いに尊重し共生する社会を実現する――。そんな目的を掲げた障害者差別解消法が施行されて3年。遅れていた国会のバリアフリー化が、重い障害を持った議員の誕生で、ようやく本格的に動き出した。施設の改修にとどめず、国会全体として障害者への理解を深め、課題の解決につなげてほしい。

 舩後、木村両氏がこれまで利用していた重度訪問介護サービスはほぼ公費で賄われていたが、就業中は全額自己負担か雇用主の負担になる運用となっている。

 参院は今回、両氏の負担とならないよう、国会内での介護費用を参院予算から支出することを決めた。当面の対応としては理解できるが、もともとこの運用には、障害者の社会参加を阻んでいるとの批判がある。両氏も働きながら公費負担のサービスが受けられるよう求めている。これを契機に抜本的な見直しを検討すべきではないか。

 審議の進め方も課題だ。

 衆院の厚生労働委員会は3年前、いったん決めたALS患者の参考人招致を「コミュニケーションに時間がかかる」といった理由で取り消し、厳しい批判を浴びたことがある。

 舩後氏が委員会などで質疑を行う場合、これまで通りの割当時間では、十分なやりとりができない可能性が高い。困難や差別に直面する当事者の経験や知見を生かすことを最優先に、柔軟に対応すべきだ。

 障害のあるなしにかかわらず、誰もが参加できる。そんな政治を当たり前の姿にしなければならない。

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