懐かしの施設が解体へ 八木山動物公園を改修 2037年に完成予定
開園から60年を迎える仙台市太白区の市八木山動物公園で、老朽化した施設を建て替える大規模改修計画が進んでいる。26日からは園西側の施設を解体し、アフリカに生息する動物を集めた「総合獣舎」の建設工事が始まる。市が導入をめざすジャイアントパンダの展示スペースも今後、確保する予定だ。
23日、解体を控える旧ゴリラ舎で、ニシゴリラの「ドン」(オス)の生前を振り返りながら、内部を見学できるツアーがあり、県内外からファンが集まった。
ドンは1971年にメスの「ローラ」とともに来園。2019年に当時の国内のゴリラで最高齢の推定50歳で死ぬまで、厚い胸板をたたく力強さや、時折見せるシャイな表情で人々を惹きつけた。
イベントでは、ドンが雪が降った日に雪を転がして遊んだり、ローラがいたずらで飼育担当の作業服をひっぱったりしたエピソードが披露され、かわいらしい2頭を参加者らが懐かしんだ。
旧ゴリラ舎の南側にあるシジュウカラガンの繁殖施設のガン生態園も、同時に解体される。園によると、渡り鳥のシジュウカラガンは、かつて仙台市内にも数百羽が越冬で飛来していたが、キツネの毛皮を確保するという国策のもと、繁殖地にキツネが放たれ、羽数が激減したという。
県内に飛来するシジュウカラガンも激減したが、同園が1982年にガン生態園を設立。飼育繁殖や放鳥に取り組み、2017年には82年ぶりに仙台市内への飛来も確認された。個体数の回復事業に取り組んだ象徴的な施設で、個体の一部は今後ツル舎に移す。飼育展示係の伊藤淳さんは「引き続き生態や繁殖事業について知ってほしい」と話す。
市八木山動物公園は1965年開園。大規模改修では施設を建て替え、動物をより野生に近い環境で飼育しようと整備を進める。工事は原則として営業しながら進め、2037年度までに完了する予定だ。総事業費は約125億円計上。市が導入をめざすジャイアントパンダの展示スペースも確保する。
再整備の対象は大きく三つのエリアに分けられる。最初に工事が始まる旧ゴリラ舎やガン生態園を含むエリアには、28年度までに、これまで園内に分散していたアフリカ地域の動物を集める2階建ての「総合獣舎」を造る。草食動物とともに観察できるよう「ライオン舎」も建設する予定だ。
このエリアの整備後には、園中心部にジャイアントパンダ、園東側にニホンツキノワグマや対州馬など日本固有種の展示スペースを設ける。改修工事中、園内の一部通路が使えなくなるという。