子どもたちが読みたい本を学校に 読書離れ防止に亀山市立図書館
小中学生の本離れを防ごうと、三重県亀山市が独自の取り組みを続けている。読みたい本を学校の司書に伝えれば、2年前にJR亀山駅前にできた新しい市立図書館から、1週間後までには学校の子どもたちのもとに本が届けられるサービスだ。
「ほんくる。」と名付けられたサービスは、市内14小中学校の4年生以上を対象に、2023年11月に始まった。
子どもたちはまず、4年生以上の全員に同市が貸し出しているタブレットを使ったり、図書室にあるパソコンを使ったりして、同図書館の検索システムにアクセス。読んでみたい本を探し出し、各校の司書を通じて貸し出し予約をする。
予約を受けた図書館では、職員がオーダーのあった本を専用の袋に入れ、公共施設を回る市の庁内便で学校の子どもたちのもとに配達する。このサービスを始めて以降、年に130冊余りの利用があるという。
同図書館には、「ほんくる。」の導入以前から子どもたちに良書を届けるサービスはあった。図書館に来にくい中心市街地から離れた小規模の小学校6校を対象に、児童書や絵本、小説など60冊を定期的に貸し出していた。
高重京子館長らは「より多くの子どもたちに読書の幅を広げてもらうとともに、学校の図書館にはない本にも触れてもらうにはどうすればよいか考えた」という。そこで思いついたのが、本の貸し出しを中学生にまで拡大し、児童や生徒の個々の知的関心に応えられる「ほんくる。」だった。
同市の図書館の歴史は古く、1785(天明5)年にできた「亀山藩校明倫舎」が始まりだ。
1980年には亀山城跡に隣接する公園内に建てられたが、平屋建ての図書館は老朽化が進み、収蔵スペースも手狭になっていた。
そこで同市は約25億9千万円をかけて、地上4階、地下1階の図書館を新設。2023年1月にできた新図書館は延べ床面積は旧図書館の3倍になり、収蔵能力も倍以上となる24万冊まで拡大した。
同図書館は「学びの場からつながる場へ」を基本理念に掲げている。駅前という利便性もあり、来館者は旧図書館の3倍にあたる年間28万人に急増。読み聞かせや講演会、各種ワークショップなど年間100回を超えるイベントを開いている。
図書館の2階は「児童・親子で過ごす」フロアとして、数多くの児童書や絵本などが並ぶ。各フロアには中高生が自習できる机がふんだんに用意され、旧図書館と比べると来館する子どもたちの数は格段に増えているという。
掲げた基本理念が体現されているとして、25年度の「子供の読書活動優秀実践校・園・図書館・団体(個人)」の文部科学大臣表彰に輝いた。
高重館長は「子どもはもちろん、大人の世界でも本離れが進んでいる。『ほんくる。』を通じて子どもたちが本への関心が高まれば、大人にも広がっていくのではないか」と話す。