「いよいよ目が見えません」拘置所からの訴え 保釈めぐる司法判断は
「外で手術しなければ失明する」。拘置所の医師がそう言っても保釈は認められなかった。片目の視力をほぼ失った50代男性が国に賠償を求めた裁判で、近く判決が言い渡される。問われるのは「人質司法」とも呼ばれる保釈の運用だ。
「いよいよ右目が見えません。恐怖を感じています」。2019年12月、覚醒剤密輸の疑いで逮捕された男性は弁護人だった水谷恭史(きょうじ)弁護士に電報を送り、保釈請求を急いでほしいと訴えた。
その5日前に大阪拘置所で診察を受け、糖尿病の合併症「網膜症」と診断された。目の血管障害で、医師は「放置すれば失明する」として、外部の病院で手術する必要があると説明。水谷弁護士はただちに保釈請求したが、ここからが長かった。
住所不定、逃亡の恐れ…退けられるうち
検察官は拘置所に確認したうえで、「緊急的な手術までは必要ない」と反対。大阪地裁の裁判官はそれに沿う形で請求を退けた。男性は起訴内容を認めていたが、「住所不定」「逃亡の恐れ」なども理由とされた。
2度目も退けられ、20年4月5日夜に右目は明暗しかわからない状態になった。翌日に3度目の請求をしたが対応は変わらなかった。
そして、5月に4度目の請求。「拘置所では対処不能」という医師の所見も携えて臨み、ようやく保釈決定は出た。ところが、男性は断念せざるを得なかった。
なぜなのか――。
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