「ひめゆり」発言の西田議員に撤回要求 沖縄県議会が異例の抗議決議
自民党の西田昌司参院議員が「ひめゆりの塔」(沖縄県糸満市)の展示内容を「歴史の書き換え」などと発言した問題で、沖縄県議会は16日、謝罪と撤回を求める抗議決議案を賛成多数で可決した。県議会が一国会議員の発言に抗議を決議するのは異例。
決議に至るまで県政与野党が表現ぶりの協議を重ね、可決は午後10時を回った。自民は賛成に回ったが、維新のみ「議員辞職を求めるべきで、自民県連に対する責任追及も不十分」などとして賛同しなかった。
決議は西田氏と石破茂・自民党総裁宛て。西田氏の発言について「沖縄戦の実相を認識せず、歴史を修正しようとするもの」と批判し、「県民の4人に1人の貴い命が奪われた。これらは日本軍の作戦による犠牲であることは紛れもない歴史上の事実」と指摘した。
西田氏の対応についても「『TPOをわきまえるべきだった』と弁明したが、沖縄の歴史教育や平和教育を非難した根幹部分は謝罪も撤回もしていない」と問題視。「戦没者や戦争体験者を冒瀆(ぼうとく)し、県民の尊厳を踏みにじる発言に満身の怒りをもって抗議する」として、西田氏には発言の謝罪撤回を、自民党には西田氏への厳格な処分などを求めた。
西田氏は3日に那覇市内でのシンポジウムで、ひめゆりの塔について「ひどい」「説明を見てると、日本軍が入ってきてひめゆりの隊が死ぬことになった。そしてアメリカが入って沖縄が解放された。そういう文脈で書いている」などと発言した。
ひめゆりの塔や、隣接するひめゆり平和祈念資料館にそうした説明や展示はなく、シンポジウムを共催した自民党県連内からも批判が出た。
西田氏は9日に都内で開いた会見では「丁寧な説明なしに、ひめゆりの塔の名前を出して講演したこと自体、非常に不適切であった」と発言を一部撤回して謝罪した。その一方、講演で「沖縄は、地上戦の解釈を含めてかなりむちゃくちゃな教育のされ方をしている」と語った点については撤回も謝罪もしなかった。
県議会は決議に先立ち、13日に同資料館の普天間朝佳(ちょうけい)館長から西田氏の発言への見解を聞き取った。普天間館長は「膨大な沖縄戦の証言と研究の蓄積を否定するものだ」とし、西田氏の発言撤回が一部にとどまっていることに「本質的なことを謝っていない」と指摘した。同資料館には11日までに、約190件の寄付と応援メッセージが寄せられているという。