日本の平和教育、戦争憎む心育てたが 足りない「平和をつくる」学び

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聞き手・富田洸平
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 日本では「平和教育」の名の下に、戦争の残酷さや悲惨さを学び、教えてきました。でも私たちは学校で、「平和のつくり方」について学んできたでしょうか。

 中学校や高校で教員を務め、「平和のために何をすればいいのか」を考える教育に携わってきた野島大輔さんに聞きました。

 中学、高校の教員として平和教育に携わりました。現在は、平和の実践を考えるワークショップでファシリテーターをしています。

 戦後の日本の平和教育は、広島・長崎の被爆や沖縄の地上戦から教訓を学び、記憶を継承することなどに主軸が置かれてきました。例えば学校では、夏休みの平和登校日に戦争体験者の方々の話を聞いたり、平和を啓発する戦争に関する映画を見たりすることが定番でした。

 これらは情緒面からのアプローチです。戦争の残酷さや悲惨さを見聞きすることで、戦争を憎み平和を愛する心を育てるという目標がある。日本の子どもは他国と比べ平和志向が強いという研究があるように、この学習は成果を残してきました。戦争を経験した世代が減っていくなかでその継承は課題ですが、今後も絶対に続けなくてはならない取り組みです。

 一方で、日本の平和教育は、情緒や感性に集中しすぎたという点も指摘されます。過去の戦争の原因を分析し、いま戦争を防いで平和を構築するにはどうしたらいいかを学ぶといった社会科学的な手法による取り組みが弱かった。

紛争の具体的な解決法を学ぶ

 背景の一つには、平和教育と…

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    越智萌
    (立命館大学国際関係研究科准教授)
    2025年5月8日7時30分 投稿
    【視点】

    平和教育の世界的なトレンドの一つとしても、恐怖に基づく抑止的なものから、個人の自律性と民主的価値の学びにシフトしていこうとする流れがあります。簡単にいうと、Noと言える個人を育てる、というものです。 戦争の防止と、教室内での喧嘩の防止を地

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    本田由紀
    (東京大学大学院教育学研究科教授)
    2025年5月8日8時27分 投稿
    【視点】

    平和も人権も情緒や思いやりの問題に矮小化されてしまうのが日本の教育である。たとえば高等学校公民科で育成すべきとされている「資質」(「学びに向かう力、人間性等」と表現されている)は、「よりよい社会の実現を視野に,現代の諸課題を主体的に解決しよ

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