第1回「異状死」年間20万人、殺人・事故も 遺体にメス入れてわかること
北原逸美
【ニュートンから】死因を見極める法医学(1)
おことわり:本記事には遺体の描写などについての記述が含まれます。
死亡事件をめぐる近年の裁判では,死因が争点になる事例がある。最近では,病気で亡くなったと思われていた人が,殺害されていたと疑われる事件も発生した。私たちの社会では,死因を見極めるために法医学が活躍し,人々の安全や権利が守られている。死因や死亡推定時刻,遺体の身元などを明らかにする法医学の技術について解説する。
ひとり暮らしの人がある日,自宅で亡くなっていたとしたら,その人の死亡の原因(死因)はいくつ推定できるだろうか。病死なのか,転んで頭を打ったのか,それとも自殺や他殺かもしれない。亡くなった人の死因を究明するには「法医学」が不可欠である。
「法医学とは,犯罪や事故,災害などにかかわる法律上のさまざまな問題を,科学的で公正な医学的判断により解決する学問です。人々の人権を守り,社会の安全と福祉の維持に貢献することを目的としています」と千葉大学大学院医学研究院附属法医学教育研究センター長の岩瀬博太郎教授は説明する。
具体的には,法医学者(法医…
- 【視点】
科学雑誌Newtonの記事を連載形式でお届けする【ニュートンから】。5月のテーマは「法医学」です。殺人事件や重大事故などの真相解明において重要な役割をになう法医学は,近年,TVドラマやマンガなどでしばしば取りあげられるなど,一般の関心の対象
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