老いと介護、見つめた谷川俊太郎さん 施設に通って紡いだ16行

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中村有紀子
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 福岡市の住宅街にたたずむ築100年を超える一軒家。木のぬくもりに満ちた居間に、十数人の認知症のお年寄りたちが集う。

 高齢者介護施設「宅老所よりあい」。昨年亡くなった詩人の谷川俊太郎さんがかつて、「僕、最後はよりあいに行くから」と言っていた場所だ。笑いの絶えないよりあいで、谷川さんは老いと介護を見つめ直した。

 1991年によりあいを始めた下村恵美子さん(72)は今から30年ほど前、静岡で開催された介護に関するセミナーに参加した。プログラムの一つに、谷川さんが登壇するシンポジウムがあった。

 詩に興味のなかった下村さんにとって、谷川さんは「教科書に載っていた人」。だが、ファンだった同行者と一緒に行くと、谷川さんが朗読した詩が心に刺さった。

 「母を売りに」

 母を背負って、市場に売りに…

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この記事を書いた人
中村有紀子
西部報道センター|福岡県政担当
専門・関心分野
生物、文化