父「殺されたも同然」 タイヤ直撃で女児が意識不明 被告に有罪判決
札幌市西区の市道で2023年、走行中の軽乗用車のタイヤが外れて女児(5)に直撃し、今も意識不明となっている事故で、札幌地裁は24日、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の罪などで若本豊嗣(とよし)被告(51)に懲役3年執行猶予5年(求刑懲役3年)の有罪判決を言い渡した。渡辺史朗裁判長は車が改造されていたことを踏まえ、「点検すべき高い注意義務を怠り漫然と運転した過失は悪質だ」と述べた。
判決は、道路運送車両法違反(不正改造)罪に問われた所有者の田中正満被告(51)については求刑通り罰金20万円とした。
判決によると、被告2人は23年10月、車のタイヤを突出させる不正な改造をした。翌11月には、前輪に異常を感じた田中被告の依頼で若本被告が点検したが、ホイールナットの緩みを確認せずに運転し、事故を引き起こした。
判決は、危険性を高める改造で、違法とわかる状態にまでタイヤを突出させたのは悪質と指摘。事故の直接的な原因ではないとしながらも、若本被告には、改造によってホイールナットが緩みやすく、異常に気づきにくい車になっているとの認識もあり、運転を控えて点検義務を果たすことは容易だったと断じた。
田中被告については、自らの趣味嗜好(しこう)のために改造を主導し、負うべき責任は大きいとした。
事故から1年5カ月が過ぎた今も、女児は意識が戻っていない。事故当日は幼稚園からの帰り道。迎えにきた父親と手をつないで歩いていたという。姉とおしゃべりしている時、タイヤが直撃した。
父親は判決後に会見を開き、「子どもが殺されたも同然で、納得できるはずがありません。被害の大きさと刑罰にアンバランスさを感じる」と悔しさをにじませた。
被害者参加制度で裁判にも出席したが、「被害者家族の言い分が反映されているのか疑問に感じる」という。「このまま終わらせたくないという気持ちが強い」と語気を強めた。
車を所有していた田中被告は、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)の疑いでも逮捕されたが、不起訴処分となった。
同席した弁護人によると、田中被告も過失運転致傷の共同正犯として罪に問われるべきだとして23日、検察審査会に申立書を提出したという。