長崎県、石木ダム事業で11年ぶり説明会 反対派住民ら参加

寿柳聡
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 石木ダム(長崎県川棚町)の建設事業をめぐり、市民団体などの疑問に県が答える説明会が20日、同町中央公民館で開かれた。建設予定地に暮らす反対派住民13世帯も参加した。県が地元で説明会を開くのは11年ぶりとなる。

 事業をめぐっては昨年、長期に及んでいる公共事業の再評価を行う県公共事業評価監視委員会が計画の妥当性などを審議。その際、住民側はダム事業に詳しい専門家の委員起用や、外部の専門家の意見を聞くことなどを求めたが実現しないまま、事業の継続が承認された経緯がある。

 20日の説明会は、反対派住民とともに問題に取り組む「市民による石木ダム再評価監視委員会」(市民委員会)が進行役を務め、一般傍聴人も含め計約180人が集まった。かつて国土交通省でダム建設など治水に長く携わり、現在は市民委員会副委員長の宮本博司さんが、県が示す防災効果や費用対効果のもととなったデータへの疑義を訴えた。

 建設地の地盤の適格性について宮本さんは、ダム周辺の地下水位が県の想定よりも広い範囲で常時満水時よりも低い可能性があると指摘。「(さらなる調査で)確認しないと、水漏れが生じたら膨大な対策費用が必要になる」などと主張した。

 県側は過去の実地調査で、ダムより標高が高い場所で湧水(ゆうすい)が確認されていることなどを根拠に、さらなる調査は不要だとして、理解を求めた。

 県河川課によると、住民らへの説明会は2014年8月以来。県と住民らの会合も、大石賢吾知事との面会があった22年9月以来という。

 終了後の取材に、宮本さんは「50年前の計画に固執しているため、取り扱うデータもその解釈も非合理なものを無理やりくっつけた形になっている」と話した。県側は、「計画通りの完成に向け建設は進めるが、説明も尽くしていきたい」と述べ、積み残しになった疑問にも引き続き答えていく姿勢を示した。

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この記事を書いた人
寿柳聡
長崎総局
専門・関心分野
行政、スポーツ、写真、ロケット、サブカル