生きる苦しみ 支え合う エンドオブライフ・ケア協会、設立10年

上野創
[PR]

 ホスピスケアの最前線で得た手法や理念を伝え、人を支えられる人材を育てる――。そんな活動を続ける一般社団法人「エンドオブライフ・ケア協会」(東京)が19日、設立10年の記念シンポジウムを横浜市で開いた。市内で在宅緩和ケアを続ける小沢竹俊・代表理事(62)らが、医療・介護職の研修から始め、専門職以外にも活動を広げている。

 シンポには約120人が参加。北海道や千葉、佐賀、沖縄などから参加したメンバーが、医療・福祉の勉強会や地域住民の相談にのる「まちの保健室」、「いのちの授業」などの取り組みを発表した。また、10年後に向けた「予想図」も話し合った。協会としては認知症の人への対応にも取り組み、他団体との協働に力を入れるという。

 協会は、「最期を迎える患者や家族が地域で穏やかに過ごすためには、医療面以外でも適切に対応できる人を増やさなくては」という思いから、小沢さんが設立した。団塊世代が75歳を超え、自宅や施設で亡くなる人が増える「2025年問題」に危機感を抱いていた。

 看護・介護職を対象に各地で「援助者養成基礎講座」を200回以上開いてきた。受講者は9千人に近づいている。

 小沢さんは同時に、「解決できない苦しさを抱える人にどう対応するか」というホスピスケアの手法を、「ユニバーサル・ホスピスマインド」と名付け、広めている。子どもや若者への支援に生かそうと、以前から学校に出向いて「折れない心を育てるいのちの授業」も続けていた。

 自分一人では広がりに限りがあるとして、6年前から協会で講師を育てる講座を開始。「授業」では、「苦しみはなぜ生じるか」「自分や他人を傷つけてしまう理由」「苦しさを分かってくれたと相手に感じてもらうための傾聴とは」などを伝える。各地の学校や地域で話す認定講師は10代から高齢者まで250人を超えた。

 千田恵子理事は「生きる上での苦しみをどのようにとらえるか。人とどう接して支え合えるのか。講座を通して一緒に考えたことを、地域で生かしてもらっていることがうれしい」と話す。

 小沢さんは「解決できない問題だらけの日々でも、人は『分かってもらえた』と実感することで幸せを感じて生きていける。そうした支え合いのど真ん中で、ホスピスのマインドを生かしてもらえるように、もっと伝えていきたい」と語った。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
上野創
横浜総局
専門・関心分野
教育、不登校、病児教育、がん、神奈川県、横浜市