フジ問題、軽視された「安全配慮義務」 調査報告書にみる企業の責任

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南日慶子

 フジテレビの一連の問題は、労働に関する法律などに照らしてどういう課題を企業に突きつけるのか。読み解くカギは、フジなどが設置した第三者委員会の報告書で頻出した「安全配慮義務」という言葉。従業員の人権を最優先に守るべき、企業の責任の大きさが浮かんでくる。

 フジのアナウンサーだった女性が元タレントの中居正広氏から受けた被害について、第三者委は報告書で「『業務の延長線上』における性暴力」と認定した。

 この「業務の延長線上」という認定の際に、第三者委が参考にしたのが、事業主に職場でのセクハラ被害の対応を求めた男女雇用機会均等法11条に基づく厚生労働省の指針で、次のように定める。

 労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、業務を遂行する場所については、『職場』に含まれる――。過去には職場の忘年会が「業務の一部」などとしてセクハラが賠償の対象になったケースもある。

 第三者委は、フジ上層部が今回の性暴力を、業務時間外に▽中居氏の家で▽プライベートで――起こった問題などとして「業務」と切り離し、被害者よりも中居氏との取引を優先した対応を批判。「安全配慮義務の観点から人権侵害の是正と救済、業務復帰のための環境整備を最優先として対応方針を決定することが求められていた」と指摘した。

 ここで言及された安全配慮義務とは、労働契約法などが定めるもので、労働者の生命や身体の安全を確保するために、企業が講じるべき義務のことだ。

 労働問題に詳しい佐々木亮弁護士は、安全配慮義務には、事前予防と事後対応の義務があると解説し、フジの場合、「事後対応はみるからに欠いている。話にならない」と指摘。「本人の申告に関してまじめに調査していない。最悪の対応だ。従業員を守ろうという感覚が全くなく、できるだけ内密にして臭いものにはフタという対応だ」と批判した。

労災にあたる可能性は?

 佐々木氏は今回の被害につい…

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南日慶子
経済部
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働き方・労働、子育て、ジェンダー、ポッドキャスト
フジテレビ問題

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