命を奪い続ける「最も危険な海洋プラ」 ゴーストギア回収作業に同行
時折水面が波立つ青い海に3人のダイバーらが潜っていく。しばらくすると、海面に浮きが現れた。浮きには、漁網やロープが結びつけられていた。
静岡県西伊豆町で4月2日、漁港から約3キロ離れた沿岸で、水深約11メートルの海底から「最も危険な海洋プラスチックごみ」を回収する作業に同行取材した。
そのごみは「ゴーストギア」。放棄された後、海へ流れ出て漂っている漁具のことで、「幽霊漁具」と訳される。漁具の機能を保ったまま海を漂うため、海洋生物を捕らえる「ゴーストフィッシング」を引き起こし、船舶の事故にもつながるとされる。
ただ、日本沿岸海域での実態はよく分かっていない。世界自然保護基金(WWF)ジャパンは2023年に潜水調査を開始。静岡県を含めた全国7カ所に広げている。
この日は、昨年6月に調査で見つけたゴーストギアを回収。漁網やロープなど計6点を引き上げた。いずれも岩場に挟まっていたという。このうち4点が、この地域でさかんなイセエビ漁で使う刺し網の一部とみられる。
調査を担当する、WWFジャパン海洋水産グループのヤップ・ミンリーさんは「地域によってゴーストギアの状況は異なる。その地域に適した対策が必要だ」と話す。
宮城県女川町では、東日本大震災で流出した漁具が今も海に残り、長崎県対馬市には海外から漁具が流れつくという。調査は26年まで続けて、結果を関係省庁に報告、対策に役立ててもらう。
回収作業にダイバーとして協力した、地元のダイビングショップの前田優子さん(40)は言う。「ゴーストギアは漁の邪魔にもなるし、船のスクリューに巻き込むこともあるので、私たち人間にとっても、あって良いものではない」
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