歩けなくなり片目を失明 年表が描く半生 もうひとつのやまゆり園

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増田勇介

連載「もうひとつのやまゆり園」④

 コピー用紙を貼り合わせて巨大な年表を作り、ひとりの女性の半生を浮かび上がらせる。そんな取り組みが、神奈川県立障害者施設「中井やまゆり園」(中井町)で進められている。

 園の外部アドバイザーで、社会福祉法人に勤める羽生裕子さんと、就労移行支援や生活介護などの事業所の運営会社代表の高原浩さんが園に残された記録を調べ、女性の家族からも話を聞いて年表に落とし込んだ。

 女性は現在60代。重度の知的障害があり、20歳のときに園に入った。1980年代のことだ。

 園に入った当日、女性は納得できず、親を追いかけて帰ろうとした。その後も「お母さん(いつ)来る」「帰宅訓練はいつ」と、一時帰宅を心待ちにしていたという。

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入所時はふくよかな体形

 身長164センチ、体重74キロとふくよかな体形だった。洋服が好きで母親がよく差し入れていた。一方、物を壊すことや対人トラブルを起こすこともあったという。

 入所した当初は、園には牧歌…

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この記事を書いた人
増田勇介
横浜総局次長
専門・関心分野
地方自治
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