強風で火の粉飛ぶ愛媛・今治の山火事 数棟に延焼 岡山も鎮圧せず
愛媛県と岡山県で23日午後に発生した山林火災は鎮圧に至らず、25日昼過ぎには愛媛県今治市の山林火災で、火の粉が原因とみられる住宅火災が発生した。数棟に延焼しており、建物に被害が出たのは初めて。
愛媛県災害対策本部によると、延焼が続く今治、西条の両市では25日早朝から自衛隊のヘリコプター1機と県の消防防災ヘリ1機が上空からの散水を再開した。陸上での消火活動も続いている。
今治市災害対策本部によると、出火場所は同市長沢地区の林野とみられ、25日午前7時24分時点で焼損面積は約214ヘクタールに広がった。県の山林火災の焼損面積としては100ヘクタール以上の火災について統計をまとめ始めた1989年以降最大という。
今治市は24日夜までに市内の553世帯1079人に避難指示を出した。25日午前6時時点で市内3カ所の避難所に53世帯102人が避難している。
市は同日、市立朝倉小学校と朝倉中学校を臨時休校にした。両校ともこの日は年度末の修了式が予定されていた。
西条市も792世帯1506人に避難指示を出し、25日午前7時時点で、避難指示区域にあるグループホームなど3施設の利用者と職員の計141人が避難している。
今治市長沢地区では25日午前6時半過ぎから、自衛隊の大型ヘリと県の消防防災ヘリがかわるがわる飛来し、空中から散水作業をした。記者が取材にあたった近隣の集落からは24日夜に比べて炎が目視できる場所は減ったが、白煙が周囲を覆い、ヘリの機影がかすむほどだった。
80代女性はマスク姿で外出し、「不安と煙の臭いで夜はほとんど眠れませんでした。早く消えてもらわんと」と話した。
同地区に近い道の駅今治湯ノ浦温泉では、消防の現場指揮本部がおかれた。夜間も地上から放水作業をし、消火活動は徹夜で続けられた。
25日午後0時50分ごろには、今治市桜井の木材会社付近から出火し、民家や倉庫など数棟に延焼した。さらに午後1時15分ごろ、同市長沢の家屋から出火し、木造平屋建ての同建物が全焼した。いずれの現場も山すそから数十メートルで、同市の中央消防署は、山火事の火の粉が飛び火したのではないかとみている。
この日は日中、市内で風速10メートルを超す風が吹いていた。
岡山市南区で発生した山林火災は、発生3日目の25日も消防や陸上自衛隊のヘリコプターなどによる消火活動が続いた。この日午後、強風の影響で火の勢いが増した。市災害対策本部は「小康状態」と24日に発表していたが、「緩慢な燃焼が継続している」と表現を改めた。
岡山市は25日夜、現場近くの南区小串地区の計627世帯1146人に避難指示を出し、玉野市も番田と北方の2地区、計464世帯987人に避難指示を出した。
市対策本部によると、25日午後3時時点で計約311ヘクタールが焼失した。
飽浦地区にある「素盞嗚(すさのお)神社・飽浦稲荷宮」の裏山では、午後3時ごろに火の手が迫り、消防が消火活動にあたっていた。神社付近には住宅が点在する。近所の男性(73)は「昼から急に風が強まった。こんなに急に火があがるとは思っていなかった」と話した。
避難所となった光南台中学校近くにいた別の男性(73)は「怖い」と漏らした。40年以上住んでいるが、「こんな経験は初めて。一刻も早く鎮火してほしいが、山の上の方は見守るしかない」とつぶやいた。