敬語で脅迫、一部は返金したコンビニ強盗 優しき彼を追い詰めたもの
町役場近くの深夜のコンビニエンスストア。入店した男は女性店員に凶器を突きつけ、言った。
「お金を出してください」
店員から現金を受け取ると、その一部を返し、立ち去った――。
「『金を出せ!』と強盗らしく言おうと思ったが、緊張して声が出なかった」。強盗の罪に問われた被告の男(37)は、後に法廷でそう振り返った。手にした凶器も、包丁の刃を取り外し、刃に見せかけた段ボールを取り付けたもので、わざわざ自作したという。
異質ともいえる行動を重ねて犯行に及んだのは、「私と妻が生き残るため」。被告を追い詰めたものは何だったのか。
約束の期日だった犯行日
1月27日、雪が降り積もる山形地裁米沢支部での初公判。被告はベージュの作業着にマスク姿で法廷に現れた。小柄で物静か。緊張からか、視線をキョロキョロさせていた。
起訴状によると、被告は2024年10月15日未明、山形県高畠町高畠のコンビニ店で現金16万円を強奪。その直後に3万円を戻し、最終的に13万円を奪って逃走した。約1カ月後の11月21日に逮捕された。
検察官による起訴状の朗読が終わり、裁判官から「検察官が述べた事実について間違いは無いですか」と聞かれると、小さな声で「特にありません」と答えた。
検察官の冒頭陳述や、法廷でのやりとりから事件にいたる経緯をたどる。
被告は高校卒業後、ガソリン…
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