インドの家電で「首位」射止めた二つのカギ 日系企業が見据える先は

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ニューデリー=伊藤弘毅
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 アジアの巨象と称される市場に進出したものの、苦戦を強いられる――。多くの日系製造企業が過去に辛酸をなめたインドで、業界首位の座を射止めた関西の家電メーカーがある。14億人市場の厳しい要求をクリアし、インドを足がかりにさらなる巨大市場の攻略を見据えている。

 首都ニューデリーのラジパトナガルマーケット。家電や生活用品を売る店舗の裏手に設置された空調の室外機には、「DAIKIN」の文字が躍る。空調大手ダイキン工業の製品だ。

 メイク・イン・インディア(インドで造る)。先進国入りを目指すモディ政権は、製造業の振興に力を入れてきた。トランプ氏が復権して不透明さが増す世界で、生産拠点としての地位を築けるか。新興大国の実力に迫る。

 付近に住むビベク・クマールさん(25)は2年前、自宅にダイキンの家庭用エアコンを設置した。「運転中の音が静かで、とても快適」。ここでダイキンの代理店を経営するグンジャン・ナルラさん(47)は、「インドでエアコンと言えば、ダイキン。今や市場における基準だ」と話した。

 同社の直近のシェアは、業務用が約6割、家庭用も約2割。いずれもインドで首位だ。

 インドの家電市場では、韓国勢が強みを見せてきた。一方、日系は多くが十分に浸透できずにいた。2000年に進出したダイキンの転機は10年。高所得層を視野に入れた営業戦略を、大衆向けに切り替えたことだ。

ターゲットを「大衆」に切り替えたダイキン工業。インドの消費者の心をつかめた要因は、価格だけではありませんでした。記事後半では、インド市場における日系のパイオニアが、同国を拠点に開拓を目指す新たな市場での奮闘について伝えます。

中興の祖」自ら招聘

 同年に現地子会社トップに招…

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この記事を書いた人
伊藤弘毅
アジア総局員兼ニューデリー支局員|アジア経済担当
専門・関心分野
南アジア、東南アジア、開発、エネルギー
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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2025年3月27日11時0分 投稿
    【視点】

    一昨年(2023年)、韓国と台湾に4か月ずつ滞在した。さまざまな家電製品のお世話になったが、両国のメーカーには申し訳なけど、性能や使い勝手でまだまだ日本の家電製品に一日の長があると感じた。エアコンの音が静かだったり、炊飯器の調理時間が短かっ

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    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2025年3月29日22時41分 投稿
    【視点】

    非常に興味深い記事。インドはなかなかハードルの高い市場ではあるが、それを乗り越えるだけの知恵とエネルギーを持つ人材がある。そこに着目して問題を解決し、答えを出し続けたことが、ダイキンの成功に結びついたのであろう。様々な失敗にもめげず、しっか

    …続きを読む