戦後最大の生活保護減額は違法、京都訴訟で逆転 6件目の高裁判断

山本逸生
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 国が2013~15年に行った戦後最大の生活保護基準額の引き下げは生存権を保障した憲法25条などに違反するとして、京都市の受給者32人が取り消しを求めた控訴審判決で、大阪高裁(佐藤哲治裁判長)は13日、原告側の訴えを退けた一審・京都地裁判決を覆し、減額決定を取り消した。「裁量権を逸脱する違法があった」と判断した。

 同種訴訟は全国29地裁で起こされた。高裁判決はこれまで5件で、2件は減額決定を取り消して3件は請求を退け、最高裁で審理が続いている。

 生活保護の受給は08年のリーマン・ショックなどで急増し、財政が逼迫(ひっぱく)するなかで人気お笑い芸人の母親が受給していることが週刊誌で批判的に報道され、バッシングが激化。「給付水準10%カット」を公約とした自民党が12年に政権復帰し、翌13年に厚労相が改定を打ち出した。食費や光熱費、服代など日常生活に必要な費用にあてる「生活扶助費」の基準額を平均6・5%(総額670億円)削り、戦後最大の引き下げとなった。

 一審で原告側は、国が専門家による「社会保障審議会」にかけず、原油価格の高騰など特異な物価上昇があった08年を起点に物価の下落率を反映したのは「恣意(しい)的だ」と主張。厚労相の裁量を逸脱するもので、「最低限度の生活」を保障する憲法に違反すると訴えた。

 地裁は同年から物価や賃金が下落した時に基準額を据え置いていて、受給者の相対的な所得は増えていたと指摘。審議会に諮る義務はなく「不均衡を是正しようとした厚労相の判断が不合理とはいえない」と判断し、請求を退けていた。

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この記事を書いた人
山本逸生
大阪社会部|裁判担当
専門・関心分野
司法、福祉、労働