PFAS、危ないの?危なくないの? 専門家が伝える「リスク感覚」
健康への影響が懸念される有機フッ素化合物(総称PFAS)。水道水では、2026年4月から水質基準にして管理される見通しだ。一方、どのくらいの濃度でどんな健康影響が出るのかなど、「知見が不十分」(食品安全委員会)な点は多い。不確実なリスクとどのように向き合えばいいのか。愛知大学の山口治子教授(リスク分析)に聞いた。
――PFASは水質基準になりそうだが、科学的には分からない点が多く残る。
リスクアセスメントは、日本の今の状況を踏まえて科学的に入手可能なデータを集め、専門家によってかなりの時間をかけて行われている。食品安全委員会や厚生労働省の報告書を見ると、評価成果が詳細に示されている。私も一通り読んだが、現在のデータの充足度を考えると水質基準はこの値がもっともらしいと思う。ただし、報告書にもあるが暫定的なもので、これから科学的な情報が入手されれば見直される可能性がある。
不確実な情報はどう伝わるのか
――そうした不確実な情報は捉えづらい部分がある。
PFASについて学生や私の周りの方に聞くと、「知らない」人が意外に多い。この人たちにPFASの話をした後、どういう情報がほしいかと聞くと、ほぼ「で、危ないの? 危なくないの?」と返ってくる。つまり、一般消費者の情報ニーズは危ないか安全かどちらなのか。一方で、どのような食品安全の問題もそうだが、情報を提供している専門家からするとこのような二元論の情報ニーズに簡潔に応えられる解はない。
このように不確実な情報をどう伝えるかだが、今のところ、私もこれといった答えは持ちあわせていない。ただ、不確実な情報がどのように消費者に伝わるのかについては、いくつかの研究が行われている。結果は状況や文脈、受け手で違う。
「データを集めている最中だから確定したことがいえない」と伝えると、誠実と受け取られることもあるし、無責任だと思われることもある。不確実だというとリスクを高く感じやすくなる場合もある。状況に応じて、科学的にわかっている情報をわかりやすく伝えるしかないだろう。その時には、消費者の受け取り方も重要で、リスク感覚を持つことが求められる。
「検出されたから怖い」ではなく
――リスク感覚とは。
学生にPFASの話をした時…