閉館迫る俳優座劇場 消える「現代演劇の拠点」が問うものとは
「私の視点」 宮澤一彦さん
まだ「戦後」のにおいがする1954年から、数々の名舞台を生んできた「俳優座劇場」(東京・六本木)の閉館が迫っています。多くの演劇ファンに愛されてきた現代演劇の拠点が消える背景を、劇場で働く宮澤一彦さんにつづってもらいました。
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東京・六本木の俳優座劇場が4月末で閉館する。劇場には膨大な数の惜しむ声が寄せられている。これほど愛されている劇場を閉めなければならないのは、なぜだろうか。
俳優座劇場は1954年に開場した。劇団俳優座の劇団員が1年間映画に出続け、出演料の大半を建設資金に充て、足りない分は近隣の人々や文化団体に株を買ってもらって調達した。当時関わった人たちが残した言葉からは、新劇のルーツである築地小劇場の精神を引き継ぎ、新たな拠点を築く情熱が伝わってくる。共鳴してくれる人たちから支援を受けて事業を始めた姿はまるで、現代のスタートアップ企業のようだ(現在、劇団と劇場は別法人。閉場後も劇団はこれまで通り活動する)。
だが、劇場の維持には希望と情熱だけでは太刀打ち出来ない厳しい現実がある。株式会社俳優座劇場は、様々な芸術団体に使ってもらう「貸し館」、舞台作品を企画・主催する「プロデュース公演」、演劇やテレビ、音楽ライブの「大道具製作」の3事業をしている。
大まかな台所事情を明かすと…