ウソで人集め、詐欺強要、睡眠制限 日本の少年もいたミャンマー国境

有料記事

笠原真 マニラ=大部俊哉
[PR]

 ミャンマー東部の詐欺拠点で働かされたとみられる日本人の少年(16)らがタイ警察に保護された。他にも約7千人の外国人が加担させられていたとみられるが、犯罪組織はどのような手口で人を集めていたのか。

中国系犯罪組織が点在するタイ・ミャンマー国境地帯などでは、複数の中国系企業が都市開発を進めてきました。ある企業のトップは、オンライン賭博の疑いで逮捕歴がある人物でした。開発とともに深刻化した犯罪状況について、後半で報告します。

 朝日新聞は、この国境地域で2021年に救助されたタイ人女性(26)に話を聞いた。

 コロナ禍で職を失った女性は21年初めにSNSで、月給4万バーツ(約18万円)のカジノ施設の求人を目にした。タイ銀行によると、平均月収は首都バンコクでも2万バーツ前後のため、高額報酬だ。

 応募するとミャンマー国境地域まで来るよう指示を受け、ミャンマー東部シュエコッコに連行された。ビルの一室で、「コールセンターの仕事」を指示されたが、実際はタイ人客を架空の通販サイトで支払いに誘導する詐欺だった。ノルマ達成まで睡眠を許されない虐待を受けた。

 「職場」には様々な人種の人がいたという。今回、日本人も巻きこまれた背景には、犯罪組織が日本を標的にした特殊詐欺にも力を入れている実態があるとみられる。

 一連の問題が注目を浴びたのは今年1月。中国の男性俳優(31)が「撮影」に誘われてタイに渡航後、行方不明になった。ミャンマー側の詐欺拠点に連行され、数日後に救出。丸刈りにされた姿が世間に驚きを与えた。

 詐欺拠点では多数の中国人が強制労働に従事させられており、男性俳優の事件発覚後、中国政府は東南アジア各国に「強力な措置」を要請。タイ・ミャンマー国境では、タイ当局を中心に捜査が一気に加速した。

 東南アジアでは、タイ・ミャンマー国境に限らず、うその理由で人を集め、詐欺に加担させる手口が広がっている。

 フィリピンでも、各地にあったオンラインカジノ施設から、24年だけで数千人の外国人らが保護された。その1人のマレーシア人の男性(27)は24年初め、中国人の友人から、春節(旧正月)のパーティーに誘われ、フィリピン北部のオンラインカジノ施設を訪れた。

 そこでパスポートとスマホを奪われ、オンラインのやり取りで恋愛感情を抱かせて金銭をだまし取る「ロマンス詐欺」への加担を強要された。

 外出は許されず、ノルマに未達だとして殴る蹴るの暴行を受けた。男性は「ほかにも多くの外国人が監禁され、拷問を受けるのを見た」と声を震わせた。

中国系犯罪組織の拠点 幹部は他国に移ったか

 16歳の日本人少年を含め…

この記事は有料記事です。残り1246文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
笠原真
ヤンゴン支局長兼アジア総局
専門・関心分野
紛争、難民、格差
大部俊哉
マニラ支局長|東南アジア・太平洋担当
専門・関心分野
安全保障、国際政治、貧困問題
ミャンマー拠点詐欺

ミャンマー拠点詐欺

ミャンマー東部の犯罪拠点に、日本人を含む多数の外国人がだまされて連れて行かれ、特殊詐欺に加担させられてきたことが明らかになりました。拠点に集められた人たちの解放と、犯罪抑止に向けた動きは。[もっと見る]