世田谷区、区史編纂で著作者人格権を求めた准教授と和解
東京都世田谷区と、区史編纂(へんさん)の委託を受けた青山学院大准教授の谷口雄太氏が、著作者人格権などを巡る争いで昨年12月23日付で和解していたことが分かった。区が著作者人格権を尊重するとしたことなどを、谷口氏側が評価した。
問題となっていたのは、2022年の区制90周年を記念した区史。区は23年度、谷口氏を含む歴史の専門家らに編纂委員を委託した際、▽執筆者は「著作者人格権」を行使しない▽執筆した原稿の著作権を区に譲渡する、とする承諾書の提出を求めた。
これに対し、谷口氏は「行政が無断で都合のよい内容に書き換えることが可能になる」などと承諾を拒否。区が谷口氏への委託を打ち切ったため、谷口氏側は23年4月、フリーのライターや編集者らでつくる労働組合「出版ネッツ」とともに東京都労働委員会に救済を申し立てた。
和解で、区は著作者人格権の尊重を明記するとし、著作権の取り扱いは別途協議するとした。和解の合意日に区は谷口氏へ委託を打診し、谷口氏はこれを受諾した上で、辞退したという。
谷口氏は27日の会見で、著作者人格権の不行使は、権力による歴史の修正につながる可能性があると指摘。「物を書く人、つくる人の権利に関わってくる問題。著作物は勝手に書き換えられてはならない」と話した。区は「時間を要してしまったが、折り合いをつけることができて良かった」とコメントした。
著作者人格権は、原稿などの著作物について、著作者の意に沿わない編集などを防ぐことなどができる権利とされている。