トランプ氏はなぜグリーンランドが欲しいのか 当地取材の記者が解説

有料記事

ワシントン=下司佳代子
[PR]

 20日に就任した米国のトランプ新大統領がデンマークの自治領であるグリーンランドを手に入れると発言しています。なぜいま、トランプ氏はグリーンランドを求めるのか。当地での取材経験のある記者が、現在地を探りました。

①氷の島に現れた「MAGA」

②グリーンランドと独立の夢

③デンマークとの関係は?

④トランプ氏がグリーンランドを欲しがるわけ

⑤裏側に潜む深刻なリスク

①氷の島に現れた「MAGA」

 中心都市ヌークで生まれ育ったラジオプロデューサーのクリスチャン・ウスロイアック・ヤエペセンさん(28)は昨年12月、トランプ氏が「国家安全保障と世界の自由のため、米国がグリーンランドを所有、管理することが絶対に必要だと感じている」とSNSに投稿したのを見て、前回と同じで冗談だろうと思った。

 トランプ氏は1期目の2019年にも買収に意欲を示したがデンマーク側が拒否し、立ち消えになった。ただ今回は、年明けに長男のジュニア氏がヌークに来るといい、様子が違う。トランプ氏自身は今月7日の記者会見で、デンマーク側が島を譲らなければ軍事的・経済的な強制手段も辞さない構えを見せた。「彼は本気で、これは不気味で奇妙だが現実の話なのだと気づいた。すごく怖くなった」

 ヌークを同日訪問したジュニア氏は自身のSNSに、「MAGA」(米国を再び偉大にする、の略)と書かれた赤い帽子をかぶった人たちと交流する写真や動画を投稿、「グリーンランドは米国とトランプが大好きだ!」と書き込んだ。

 ただ、デンマークの公共放送DRは、SNSに登場した人々の一定数はホテルの近くで陣営から声をかけられ、食事の提供を受ける代わりに帽子をかぶってメディアに出ることに同意したホームレスら生活困窮者だったと伝えた。

②グリーンランドと独立の夢

 グリーンランドは日本の約6倍、217万平方キロの広大な土地。暮らしているのはわずか約5万6千人だ。表土の約8割は氷に覆われ、人が住める地域は沿岸部のごく一部に限られ、街から街への移動は船か航空機に頼る。

 住民の9割はイヌイットなど…

この記事は有料記事です。残り2177文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
下司佳代子
アメリカ総局|米国の外交・防衛
専門・関心分野
国際報道
  • commentatorHeader
    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2025年1月26日17時7分 投稿
    【解説】

    良くまとまっているとは思うが、一つ抜けているのはグリーンランドにおける水爆落下事件。米軍基地に極秘で配備されていた水爆が爆撃機から外れて落下したという事件があり、被害は出ていなかったが、当事者であるグリーンランドに知らされることなく、この問

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    座安あきの
    (ジャーナリスト・コンサルタント)
    2025年2月7日9時40分 投稿
    【視点】

    トランプ大統領のグリーンランド取得発言の背景を理解するのに参考になるのが、Netflix配信ドラマ「BORGEN(コペンハーゲン)権力と栄光」、グリーンランドが舞台の「シーズン4」のシリーズ。新たに掘り当てた石油採掘権を巡って独立機運に沸き

    …続きを読む
トランプ再来

トランプ再来

2024年の米大統領選で共和党のドナルド・トランプ前大統領が返り咲きました。「米国第一主義」を掲げるトランプ氏の再来は、どんな影響をもたらすのか。最新ニュースをお伝えします。[もっと見る]