トランプ氏は世界をどこへ導くか 2025年、孤立主義に向かう米国

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望月 洋嗣
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 カジュアルなドレス姿の女性や、ジャケットにネクタイを締めた男性が、白い布に覆われた丸テーブルを囲む。暖炉では薪が燃えさかり、その前のテーブルでは、紙でできた金色の王冠をかぶった若い女性グループが、写真撮影に興じる。12月半ば、ランチに招かれたワシントン郊外の社交クラブ。大きなクリスマスツリーが飾られ、会場は年の瀬らしい華やかさに満ちていた。

 民主、共和両党の政治家や高官、それに各国の外交官もメンバーに名を連ねるこのクラブはかつて、米外交や国際情勢の行方を左右するような議論が交わされる場でもあったと聞いた。しかし、ワシントン政治を担ってきた既得権層を敵視するトランプ次期大統領(78)は、国際主義のエリートたちによるこうした場での議論も忌み嫌う。私をここに招いた共和党員の元政府高官は「トランプ氏が再登板すれば、米国は国際問題への関与から本格的に身をひく。世界にどれほどの悪影響をもたらすか。いくら心配しても足りない」と心情を吐露した。

 11月の米大統領選で激戦7州のすべてを制する「圧勝」を果たしたトランプ氏がこの先、「米国第一」の原則に従って、外交・安保政策を劇的に変えることは間違いない。トランプ氏が指名してきた次期政権の閣僚や高官の顔ぶれからも、かつての「トランプ外交」の復活が容易に想像できる。今年2月、トランプ氏の演説を取材するために訪れた保守派の一大イベント「保守政治活動会議(CPAC)」の会場で、今後を予見するかのようなスローガンが掲げられていたことを思い出す。

 「ここはグローバリズム(国際主義)が死ぬ場所だ」

帝国主義に近い危険な状況

 いったい、トランプ氏は世界…

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    市原麻衣子
    (一橋大学大学院法学研究科教授)
    2024年12月31日6時42分 投稿
    【視点】

    「一種の独立した大国として行動し始めなければならない」というエリオット・コーエン氏の指摘に賛同します。トランプ政権の米国が自国第一主義を前面に掲げれば、国際社会には空隙が生じます。国際秩序を維持する責任は、米国以外の大国の手に移ります。

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