65年前に始まった北朝鮮への「帰国事業」を考える 大阪で集会開催

中野晃
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 在日朝鮮人らの北朝鮮への「帰国事業」の開始から65年になる14日、帰国事業とは何だったのかを考える集会が大阪市内であった。

 脱北した元帰国者からの聞き取りを続ける「北朝鮮帰国者の記憶を記録する会」が主催。事務局長を務めるジャーナリストの石丸次郎さん(62)は当時の日本について、「朝鮮人と一緒に生きていこうという社会意識が希薄で、帰国を人道支援として後押しした」と語った。

 詩人の金時鐘(キムシジョン)さん(95)=奈良県=は、帰国運動を進めた在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)による「地上の楽園」との宣伝に対して「あれだけ国土が破壊された朝鮮戦争から間もないのに楽園であるはずがない」と指摘すると、批判を浴びたと回顧。青年時代に主宰した詩誌の同人や親類が乗る帰国船を新潟港で見送り、「無性にこみあがってならなかった」と振り返った。

 祖父やおじら多くの親類が北朝鮮へ渡った市民団体「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉(シンスゴ)さんはオンラインで参加。「差別や貧しさから逃れられると少しでも希望が持てたのが帰国だった。当時の韓国は軍事政権で怖かったし、最後の生きる望みとして北朝鮮にしがみついたと思う」と語った。

 帰国事業は日朝両赤十字社の協定に基づき、第1次帰国船が1959年12月14日に新潟港から出航。84年までに計9万3340人が北朝鮮へ渡った。日本人配偶者ら6730人の日本国籍者が含まれていた。

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