パートナーシップ宣誓制度の運用開始、仙台市が10日から

中島嘉克 阿部育子
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 仙台市は10日、性的マイノリティーのカップルの関係を公的に認める「パートナーシップ宣誓制度」の運用を始める。法的な効力はないものの、宣誓したカップルは市営住宅の申し込みなど市の制度の一部を利用できるようになる。こうした制度を導入するのは県内初だが、全国20の政令指定都市では最後。県内では栗原市も来年2月に導入する予定。

 仙台市の制度は、一方または双方が性的マイノリティーで、いずれも18歳以上のカップルが対象。少なくとも一方が市内に住所があるか転入予定であることなどの要件もある。

 市への「宣誓」は原則対面で行うため、2人で窓口に行く必要がある。市はプライバシーに配慮した場所で宣誓を行うとしており、宣誓する場合は事前予約が必要だ。予約は3日から受け付けており、すでに複数のカップルからの予約や問い合わせがあるという。

 カップルが宣誓書などの必要書類を提出すると、市はA4サイズの「受領証」と運転免許証サイズの「受領証カード」を交付する。

 受領証を提示することで、住宅、医療、亡くなったとき、災害時の四つの分野で新たに計11の制度が利用可能になる。たとえば市営住宅にパートナーと同居する場合も入居を申し込んだり、罹災(りさい)証明書の交付を代理申請したりできるようになる。市営墓地の使用者が亡くなった場合、パートナーに名義を変更することもできるという。

 パートナーシップ宣誓制度は「結婚に相当する関係」を自治体が認めるものだ。だが法的な効力は生じないため、法律婚では認められる財産相続の権利や税制上の優遇を受けることはできない。また制度の内容が自治体ごとに違うため、2人とも市外に転居した場合は受領証を市に返還する必要もある。

 市は昨年11月から大学関係者らが参加する審議会で制度づくりを進めてきた。郡和子市長は3日の定例会見で「性的マイノリティーの方々が少しでも安心して暮らしやすい環境が作られ、性の多様性に関する市民の理解が深まることにつながってほしい」と話した。

 制度を導入する自治体は全国各地に広がっている。認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」によると、制度を導入する自治体は459自治体(6月28日時点)で、交付件数は7351件(5月31日時点)。

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 都道府県単位でみても、制度の導入自治体ゼロというのは、全国で宮城県だけだった。

 導入を待ち望んでいた一人、小浜耕治さん(62)は「ようやく始まる。ほっとしています。何でこんなに時間がかかったのか」と思いをめぐらす。

 自らも太白区内で同性のパートナーと暮らし、「多様な性」をテーマに活動する任意団体「にじいろCANVAS」(青葉区)の共同代表を務める。当事者として、そして性的マイノリティーを支援する一市民として、パートナーシップ条例が全国で初めて成立したころから10年近く、制度の導入を市に要望してきた。

 パートナーシップ制度について、「生活するために必要な、小さなカミングアウトをアシストするもの」だと話す。わざわざ説明しなくても2人の関係性を証明するものとして、性的マイノリティーが「社会とつながっていくための制度。たとえすぐ何かに利用しないにしても、お守りのような意味でも当事者は宣誓制度をどんどん利用して欲しい」と望む。

 小浜さんがそう考えるのは、当事者以外の市民たちにこそ、この制度の意味を理解してもらいたいからだ。どこか遠くの存在ではなく、当たり前にすぐそばに暮らしているいうことを知って欲しいという。「制度が始まれば、今後受領証を手にした2人を徐々に目にすると思うが、温かく受け止めてほしい」と話す。

 一方で、すでに制度を導入した自治体の中には、同性カップルの住民票の続き柄を異性間の事実婚と同じ表記「夫・妻(未届)」にできるようにするところも増えてきた。「今回は始まりでしかない。当事者の声をどんどん取り入れて検討し、『生きた制度』にしていってほしい。そこにこそ、仙台市の姿勢が表れるのではないか」

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仙台市のパートナーシップ宣誓制度の概要

〈対象者〉

・一方または双方が性的マイノリティーで、いずれも18歳以上のカップル

・少なくとも一方は仙台市に住所があるか、転入を予定している

〈手続き〉

・原則として2人で窓口に行き、宣誓書などの必要書類を提出する

・市から関係を証明する「受領証」と「受領証カード」が交付される

(宣誓には事前予約が必要)

〈効果〉

・市営住宅への入居申し込みができる

・罹災証明書の交付を代理申請できる

(法的な効力はない)

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この記事を書いた人
中島嘉克
経済部|経済産業省担当
専門・関心分野
デジタル、産業政策