深町秋生さん、深い闇と娯楽性の間で 異色の山形弁の小説誕生のわけ
著作の数々が人気俳優主演で映画化・ドラマ化されるなど、山形を拠点に話題作を発表してきた作家の深町秋生さん(49)が、2025年1月で作家デビュー20年を迎える。当初は深い闇を衝撃的に描いた犯罪小説を手がけ、近年は娯楽性を加えて社会問題を提示するシリーズなど、作品の幅をぐんぐん広げてきた。創作で大切にしていることや、山形への思いを聞いた。
作品にサラリーマン生活のうつうつとした感情
――作家を志したきっかけは。
「大学4年生の時、やってきた音楽のバンド活動もしなくなり、就職活動に本腰を入れようとアルバイトもやめた。空いた時間は図書館で本を読んでばかり。大沢在昌さん、馳星周さん、浅田次郎さんらの作品です。父親が趣味で小説を書いていたこともあり、卒業後の23歳から自分でも書くようになりました」
――就職は?
「山形に本社がある会社に就職し、2年目から営業マンとして大宮(現さいたま市大宮区)で3年勤務。福岡市でも働いた。平日の夜や週末に書く生活の中で、デビュー作の長編『果てしなき渇き』は生まれた。だから舞台は大宮。2004年に『このミステリーがすごい!』大賞をいただき、翌05年に作家デビューです」
「サラリーマンを約10年間続けました。受賞後も5年くらい働かせてもらい、会社には足を向けて寝られません」
――「果てしなき渇き」は元刑事が行方不明の娘を捜し、いじめや薬物なども描かれます。
「サラリーマン生活のうつうつとした感情をぶつけた感じの作品で、恥ずかしいかぎりです。本は売れたのですが、読んで楽しませるという作品にはなっていない。評論家の評価も厳しいものが多かったです」
「俺に足らんかったのはそれだ」と気づき
――その後、「組織犯罪対策課 八神瑛子」シリーズを出します。
「元々は男性の主人公で書い…