楳図かずおの天才ぶり 伊藤潤二さん「画家ダリにも引けを取らない」
恐怖漫画の第一人者だった楳図かずおさんが亡くなった。長年のファンとして知られ、自身もホラー漫画界を代表する存在となった伊藤潤二さんに追悼の思いを語ってもらった。
いとう・じゅんじ 1963年、岐阜県生まれ。86年に「月刊ハロウィン」の新人賞「第1回楳図賞」で佳作入選し、翌年デビュー。代表作に「富江」「うずまき」など。2023年にフランス・アングレーム国際漫画祭で「特別栄誉賞」を受賞。
保育園に入るか入らないかの頃、姉が持っていた「ミイラ先生」の単行本を読んだのが楳図作品との出会いです。単行本のつもりで画用紙を糸で縫って冊子を作り、小学校に上がる前から鉛筆でホラー漫画を描くほど影響を受けました。
以来「漂流教室」や「わたしは真悟」など、楳図先生の作品にがっかりしたことは一度もありません。恐怖というものを研究し、ヘビやクモにまつわる古典的な怪談から、次第に人間の心が生み出す怖さへ。エンターテインメントとしての面白さで読者をぐいぐい引っ張りながら、早い時期から芸術も目指していた。私が特に影響を受けたのは、「おろち」や「洗礼」などで描かれた美醜から生まれる恐怖でした。美しいものへの憧れとグロテスクなものの対比。「美女と野獣」のテーマは昔からありますが、楳図先生がそれをより極端なものとして発展させた。
手塚治虫先生らが活躍していた頃に独自の道を探究し、他の作家が描いていないものを描きたい気持ちが強かったんだと思います。恐怖漫画のパイオニアとなり、斬新さと完成度で他の追随を許さなかった。
楳図先生の作品は、ネットワ…