第3回立憲議席増でも変わらぬ沖縄の現実 野田氏は超党派で地位協定改定を

有料記事速・解説 2024衆院選

聞き手 編集委員・高橋純子

 沖縄から見たこの国の政治は、本土からのそれとは違うと、国際政治が専門の我部政明・琉球大学名誉教授は語ります。自民党が大きく議席を減らし、野党が議席を伸ばした衆院選の結果に「沖縄だけでなく、マイノリティーの声が、少しは国政に届きやすくなるのでは」。そのココロを聞きました。

     ◇

 今回の総選挙の意義は、前政権まで連綿と続いていた「安倍一強」体制が崩れたことでしょう。

 大きく議席を伸ばしたとはいえ、野党第1党の立憲民主にさほどの期待はありません。前身の民主党は、米軍普天間飛行場の移設について「最低でも県外」と言いながら実現できず、どれだけの傷を沖縄に残したか。それでも野党の存在感が増したことで、政権与党が国会の議論を軽視し、「数の力」で強行突破を重ねることは難しくなるはずです。沖縄だけでなく、この国のマイノリティーの声が、少しは国政に届きやすくなると期待しています。

 安倍晋三政権以前も沖縄の民意を無視するかたちで物事が決められ、押しつけられてきました。安倍政権は押しつけにとどまらず、沖縄の民意を踏みつけにしてきたと言っていいでしょう。2019年の県民投票で、辺野古新基地建設に7割が反対したというのに一顧だにしなかったのが最たる例です。

 米国の対テロ戦争以降の日本では、世論に耳を傾け、議論を重ねるといった当たり前の政治のプロセスから安全保障問題を切り分けて、専門家だけで決める。そして、国民はそれに従えばいいんだという考えが、幅を利かせています。世論なんか気にしていたら判断を誤る、と。

 集団的自衛権の行使容認も、防衛費の大幅増も、敵基地攻撃能力の保有も、殺傷能力のある兵器の輸出解禁も、国会での議論をすっ飛ばし、閣議決定により「勝手に」決められた。そんなやり方が横行していること自体が異常です。国民の安全や世論を二分するような重要な問題は、時間をかけて議論をする。野党の疑問や批判に、政府は丁寧に答え、説得する。国会が本来の姿を取り戻すだけでも、現在の惨憺(さんたん)たる政治の光景が少しはましになるでしょう。

 石破茂首相が日米地位協定の改定について「必ず実現したい」と明言したことで、全国的に再びこの問題に注目が集まったことは良かったと思います。ただ、裏金問題への対応を見ていても、口約束になる可能性が高いし、さらにうがった見方をすれば、「安倍政権とは違う」という印象を振りまくための戦略に、沖縄を利用しているのではないか。

県民が衝撃受けた「平成の琉球処分」

 石破氏は防衛庁長官時代の0…

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    木村司
    (朝日新聞社会部次長=沖縄)
    2024年10月28日17時45分 投稿
    【視点】

    日米地位協定のあり方が、国政選挙で今回ほど注目されたことはなかったのではないでしょうか。改定を掲げた石破首相の発言のぶれ、実現へのハードルの高さ(あるいは、米国に提起することによるマイナス面)が強調される傾向があり、具体的な課題の中身に立ち

    …続きを読む