UNIFILを攻撃するイスラエルの国連嫌悪 PKOの役割と可能性
レバノンに地上侵攻したイスラエル軍が、国連の平和維持活動(PKO)の一つである国連レバノン暫定駐留軍(UNIFIL)を攻撃しています。なぜイスラエルはPKOをも攻撃対象にするのか。PKOの役割や立場とはどんなものなのか。国連アフガニスタン支援ミッション政務官などを歴任してきた上智大の東大作教授に聞きました。
――そもそもUNIFILとはどういう組織でしょうか。
イスラエルとレバノンの間ではこれまで何度も衝突がありました。最初にUNIFILができたのは1978年で、国連の監視団を入れて、レバノン側に侵攻したイスラエルとレバノンの衝突激化を抑えるために派遣されたのが始まりです。
1982年にレバノンに侵攻したイスラエル軍は2000年に撤退したのですが、06年にイスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエルの戦闘が始まり、再びイスラエル軍がレバノンに地上侵攻しました。その後、イスラエル軍がレバノンから撤退するにあたり、戦闘が再開しないよう緩衝地帯を設け、停戦を維持するために組織を拡大したのが今のUNIFILです。
――どれくらいの規模ですか。
現在はインドネシアやイタリアなど50カ国ほどから1万人が派遣されています。国連は中東やアフリカなどで現在11のPKOを展開していますが、その中でも要員を派遣する側からすると比較的「人気」が高いところでした。アフリカなどに比べて病気の心配も少なく、ヒズボラとイスラエルが停戦している間は治安も良かったからです。そのため日本でもUNIFILに派遣するべきではないか、という議論がずっとあったほどです。06年以降全面的な戦闘が再発せずにきたのは、UNIFILの存在が大きかったと思います。
――昨年10月以降、パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が激化し、戦線はレバノンにも広がりました。
1982年から2000年の侵攻でレバノンの一部を占領したイスラエルに対する抵抗運動として生まれたのがヒズボラです。ヒズボラは今回、イスラエルがガザへの激しい攻撃を行う中、ハマスへの連帯を示すとしてイスラエルへミサイル攻撃を行い、イスラエルもこれに応酬していました。昨年10月から1年ほどその状態が続きましたが、今月に入り、イスラエルはヒズボラへの空爆を激化させ、さらには地上侵攻に踏み切りました。
■イスラエルと国連の関係も影…
イスラエル・パレスチナ問題
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